読書 / 学び

難しい本を読み通す組み立て - 挫折する前に決めておくこと

この記事は約 2 分で読めます 執筆 / 運営: ここもり

最初の 30 ページで止まる

評価の高い本を買った。読み始める。数ページで、書いてある内容が頭に入っていないことに気づく。戻って読み直す。また分からなくなる。

30 ページあたりで本を閉じ、机の上に置く。数日後に別の本を読み始めている。

この経験を繰り返すと、自分には難しい本が読めないという結論が出ます。しかし実際に起きているのは、読み方の設計をせずに読み始めたことによる詰まりです。

全部理解する必要はあるか

最初に外すべき前提が、書いてあることを全部理解しなければならないという条件です。

難しい本の内容は、著者が長い時間をかけて考えたものです。それを初読で全部理解できるなら、その本は難しくありません。分からない部分が残るのは、本の難度が想定どおりだということです。

そして、専門書や古典を読む人が全部理解しているわけではありません。分かる部分を拾い、分からない部分に印を付けて進む。この読み方が標準です。自分の理解がどこで切れているかを見張るこの働きはメタ認知と呼ばれ、難しい本を読むときに実際に使われている技能です。

全部理解する条件を課すと、1 ページ目から進めなくなります。分からない箇所で止まり、調べ、戻り、また止まる。この繰り返しで最初の章に何日もかかり、そこで力が尽きます。

条件を外すと、進み方が変わります。分からない箇所を通過してよい。後から戻ればよい。戻らなくてもよい。

読む目的を先に決める

次に決めるのが、その本から何を得たいかです。目的によって読み方が変わります。

全体の主張を知りたいなら、細部は飛ばして構いません。序章と結論、各章の冒頭と末尾を読めば、主張の骨格は取れます。

特定の論点を確かめたいなら、目次から該当箇所に直行します。前から読む必要はありません。

著者の考え方を身につけたいなら、精読が要ります。この場合は時間がかかることを前提に、章ごとに区切って進めます。

教養として通読したいなら、理解の深さより完走を優先します。分からない箇所を飛ばし、最後まで到達することを目標にします。

目的が決まっていないと、どの読み方も選べません。全部を精読しようとして止まるのは、目的を決めていないことの結果です。

順番に読まない選択

難しい本は、前から順に読むのが最良とは限りません。

多くの学術的な本では、序章に全体の要約が置かれています。ここを読むと、以降の章がどこに向かうかが分かります。行き先を知ってから細部に入るほうが、迷子になりません。

結論を先に読む方法も有効です。著者がどこに着地するかを知った状態で本文を読むと、議論の位置づけが分かります。推理小説では避けたい読み方ですが、論述の本では効きます。

訳者の解説や巻末の注も、先に読む価値があります。特に翻訳書では、解説に本書の位置づけと読み方が書かれている場合があります。

そして、章を選ぶ選択もあります。全 12 章のうち自分の関心に関わる 3 章だけを読む。読んでいない章があることを未完了として扱わなければ、この方法で十分な収穫が得られます。

手を動かして読む方法

読んでも頭に入らないという感覚には、読むという行為が受動的であることが関わっています。学習法の研究で、読み返すより思い出したり書き出したりするほうが残ると繰り返し示されているのも、同じ理由です。

手を動かすと、処理の仕方が変わります。方法をいくつか挙げます。

  • 章の要約を 1 行で書く: 読み終えた章について、何が言われていたかを 1 行にする。書けないなら理解が足りていないと分かります
  • 疑問を書き出す: 分からなかった箇所を疑問の形で書く。後で調べる対象になり、放置しても記録として残ります
  • 自分の例に置き換える: 抽象的な議論を、自分の知っている具体例に当てはめる。当てはめられれば理解しています
  • 誰かに話す: 読んだ内容を人に説明する。説明が詰まる箇所が、理解の切れ目です

どれも時間がかかります。しかし読んで忘れる時間を積むより、実際に残ります。

そして、読む速度を落とすことを許可します。難しい本を早く読む必要はありません。1 日 10 ページでも、100 日で 1,000 ページに届きます。

途中で降りる判断

最後に、読み通さない選択についても書いておきます。

読み始めた本を最後まで読まなければならない、という規則はありません。ここで働きやすいのがサンクコスト効果で、すでに払った時間や代金を惜しんで、合わないと分かった本を読み続けてしまう傾向です。合わない本、今の自分には早い本、期待した内容と違った本。いずれも途中でやめてよい。

やめる判断の目安として、次のようなものがあります。50 ページ読んで内容に関心が湧かない。読むことが義務になっている。他に読みたい本があるのに、この本のせいで読書が止まっている。

やめた本は、後で戻ってこられます。数年後に読み返すと、当時分からなかった箇所が読めることがあります。基礎になる知識が増えたか、関心が変わったか。読める時期が来ていなかっただけの場合が多い。

挫折した後の立ち直り方と、読む習慣そのものを作る方法を合わせて考えると、1 冊の完走より読み続ける状態のほうが重要だと分かります。難しい本を読むのは、その本を制圧する作業ではありません。自分が受け取れる分を受け取り、残りは次の機会に置いておく。この構えで始めると、最初の 30 ページを越えられます。

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