喪失 / 悲嘆

流産の後、夫との悲しみの温度差がつらい - 悲しみ方の違いを冷たさと取り違えない

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流産の後、夫との温度差はなぜ生まれるのか

流産の後、自分は涙が止まらないのに、夫は翌週から普段どおり出勤し、食卓で仕事の話をしている。そんな姿を見て「この人にとっては大したことではなかったのか」と感じ、悲しみに加えて孤独まで抱えることがあります。ただ、外から見える落ち着きと、内側で起きていることが一致しているとは限りません。温度差に見えるものの中には、悲しみの量の差ではなく、悲しみの出し方や、出すまでの時間の差が混ざっていることがあります。

差が生まれる理由の一つは、同じ出来事を別の場所から経験していることです。妊娠していた側は、つわりや体の変化、出血や処置、その後の体調の戻りまで、喪失を体ごと通ってきます。もう一方は、その横に立ち会いながらも、体の上では何も変わらないまま日常に戻ります。妊娠を実感していた期間の長さが違うこともあり、エコーの画面を一緒に見た回数や、名前の候補を話した夜の数によって、失ったものの輪郭も人によって違って見えます。

もう一つは、周りから求められる役割です。親族や職場から「奥さんを支えてあげて」と声をかけられ、自分が崩れてはいけないと感じる人もいます。病院の手続きや職場への連絡、親への報告を引き受けるうちに、自分の悲しみを後回しにしたまま時間が過ぎていく場合もあります。流産は周りに語られにくい喪失で、妊娠していなかった側の悲しみはさらに見えにくくなることがあります。このように、周囲から悲しむ資格を認められにくい悲しみは公認されない悲嘆と呼ばれ、社会の側の受け止め方については語られない喪失を悼む権利という見方も参考になります。

泣く、語る、といった形で気持ちを外に出す人を「直感型」、仕事に打ち込む、原因を調べる、手続きを引き受けるといった行動で持ちこたえる人を「道具型」と呼ぶ分け方があります。どちらが正しいということはなく、一人の中で両方が混ざることもありますが、道具型に寄った悲しみ方は、外からは悲しんでいないように見えることがあります。

温度差に気づいた時に見たいのは、相手が悲しんでいるかどうかを当てることではありません。相手の出方が、自分の悲しみを否定するものなのか、単に自分と違う形なのかを分けることです。前者なら話し合いの中身が変わりますし、後者なら頼み方を工夫する余地があります。

流産の後の夫が冷たく見える出方と、その別の読み方

相手の出方のうち、冷たさと受け取られやすいものを並べました。右の列は「こう考えるべき」という正解ではなく、別の可能性があるかを確かめるための材料です。

相手の出方こちらに見えやすい意味別にありうる意味確かめる一言の例
すぐに仕事に戻り、残業も減らさないもう気持ちが切り替わっている家にいると考えてしまうので、手を動かして持ちこたえている「仕事に戻っている方が、少し持ちこたえやすいのかな。答えなくても大丈夫」
その話になると黙る、話題を変える思い出したくない、関心がない口にすると崩れそうで、こちらの前では泣けないと思っている「話したくなったら、いつでも聞くね。うまく言葉にならなくてもいいから」
「次があるよ」「早く元気になって」と言うこの子のことを無かったことにしている励ます言葉を他に知らず、自分も先を見ないと立っていられない「次の話より、今はこの子の話をしたい」
原因や確率を調べ、数字で説明してくる気持ちより理屈を優先している「防げなかった」という思いを、情報を集めることで鎮めようとしている「調べてくれてありがとう。今日は理由より、そばにいてほしい」
家事や手続きを黙って全部引き受ける気持ちの話を避けるために動いている体を休ませたい、自分にできることはこれだと思っている「助かってる。あなたは休めてる?」
泣いている姿を一度も見せない悲しんでいない一人の時間や、車の中や職場など、見えない場所で泣いている「あなたはどんなふうにつらい?」

表の右側を読んで「それでも寂しい」と感じたなら、その気持ちは間違いではありません。相手なりの悲しみ方があると分かることと、自分がほしい支え方を得られていることは別の話です。

一方で、悲しみ方の違いでは片づけられない出方もあります。違いなのか、こちらの悲しみを否定する出方なのかを分ける目安は次のとおりです。

悲しみ方の違いと考えられる時話し合いの中身を変えた方がいい時
自分は泣かないが、こちらが泣くことは止めない「いつまで泣いているの」と悲しむこと自体をやめさせようとする
話題は避けるが、頼めば短くても付き合ってくれる話そうとすると怒る、無視する、部屋を出ていくことが続く
体調を気にかけ、通院や休みには協力する体の回復を気にかけず、家事や仕事を以前どおり求める
原因を調べるが、誰かを責める形にはならない「あなたの生活のせい」など、流産をこちらの責任にする

右の列が続く時は、頼み方を工夫するより先に、自分の心身を守ることを優先してください。流産の原因を責める言葉や、休むことを許さない態度が重なる時は、二人の話し合いだけで抱えず、後の節の相談先を使うことも考えてください。責める言葉や態度が続いて相手が怖いと感じる時は、DV 相談ナビ (#8008) にかけると、近くの配偶者からの暴力の相談先につながります。

話を聞いてほしい時、パートナーにどう頼めばいいのか

「察してほしい」という気持ちは自然なものですが、悲しみ方が違う相手には、こちらが何を求めているかが見えていないことがあります。相手が黙っているのは、何をすれば助けになるのか分からないからかもしれません。頼み方のこつは、してほしいことを小さく具体的にし、時間の長さと終わりを決め、相手が断れる余地を残すことです。

ただ聞いてほしい時

相手が理由や解決策を返してくる人なら、最初に「答えはいらない」と伝えると、相手の肩の力が抜けることがあります。

  • 「今日は 10 分だけ、あの子の話をさせて。何か言おうとしなくていいから、聞いていてほしい」
  • 「アドバイスより、『つらかったね』と一言もらえたら、それで十分」
  • 「泣いても止めないでほしい。隣に座っていてくれたら助かる」

一緒に悼む形がほしい時

言葉で話すのが苦手な相手には、行動を一緒にする頼み方の方が届く場合があります。

  • 「エコーの写真をしまう箱を、一緒に選んでくれない?」
  • 「予定日だった日には、二人で少しだけ時間を取りたい」
  • 「あの子に名前をつけるか、一緒に考えてほしい」

相手の気持ちも知りたい時

温度差を埋めたい時は、自分の話をするだけでなく、相手の悲しみを聞く入口も作ると、会話が一方通行になりにくくなります。問い詰める形にならないよう、答えなくてもいい聞き方にします。

  • 「あなたがどう感じているか、知りたい。今すぐじゃなくていい」
  • 「仕事に戻ってから、一人で考え込むことはある?」
  • 「私の前で泣けないなら、それでもいい。でも一人で抱えないでね」

頼んだ後に返ってきたものが期待より小さくても、すぐに失敗と決めなくてかまいません。相手にとっては、悲しみを言葉で扱うこと自体が初めての経験という場合もあります。一度で通じなければ、時間を置いて、言い方を変えてもう一度伝えれば足ります。

反対に、自分の方が泣けずにいて、相手から「どうして平気なの」と責められている場合もあります。その時は、平気なのではなく別の形で抱えていることを伝え、「話すより、今は手を動かしている方が持ちこたえられる」と言葉にしてみてください。どちらの側にいても、相手の悲しみ方を自分の形に合わせさせようとしないことが、温度差を責め合いに変えないための土台です。

次の妊娠の話を出す時期がずれた時の考え方

温度差が表に出る場面の一つが、次の妊娠の話です。一方は早く次へ進みたい、もう一方はまだ考えられない。どちらも失った子を軽んじているわけではなく、前に進むことで悲しみを支える人もいれば、立ち止まることで悲しみを守る人もいます。早く話を出した側は「先の希望がないと立っていられない」、まだ考えられない側は「次の話をすると、この子が上書きされる気がする」と感じていることがあります。

ずれの形早い側にありうる気持ち遅い側にありうる気持ち間に置ける一言
一方が数週間で次の話を出す希望を持たないと前に進めない悲しむ時間を奪われる気がする「次を考えるのは嫌じゃない。でも、今はこの子のことを考える時間がほしい」
年齢や時間を理由に急ぐ待つほど機会が減るのではと焦る体と心が追いつかないまま決めたくない「時期のことは、二人で主治医に聞いてから話そう」
一方が「もう妊娠したくない」と言うこのまま諦めることになるのが怖いまた失うかもしれない怖さが大きい「今の気持ちとして聞いておく。決めるのはもう少し先にしよう」
親族から次を急かされている周りの期待に応えたい二人の問題に口を出されたくない「親への返事は、二人で決めてから一緒にしよう」

体の回復や、次の妊娠を考えてよい時期は、医学的な判断が関わるので、主治医に確かめてください。出血や痛み、発熱など体の症状が続いている時は、話し合いより先に受診を優先してください。

次の妊娠のことは、二人で話し合うのが基本ですが、今は二人で決めない方がいい時もあります。たとえば、どちらかが眠れない、食べられない状態が続いている時、相手を責める言葉が出ている時、親族の圧力で答えを出そうとしている時です。そうした時は、決めることそのものを先に延ばし、「いつまた話すか」だけを決めておく方法があります。「来月の終わりに、もう一度この話をしよう」と日を置けば、早い側には話が消えていないこと、遅い側には今すぐ答えなくていいことが伝わる場合があります。

二人だけで抱えきれない時の相談先

話すたびに言い争いになる、相手の前で泣けなくなった、自分だけが取り残されている感覚が数か月たっても薄れない、といった時は、二人の外に話せる場所を持つことを考えてください。

流産や死産を経験した人の話を聞くグリーフケアの場は、処置を受けた病院の相談窓口や、地域の保健センター、流産や死産の経験者どうしが集まる会などにある場合があります。相手が乗り気でない時は、まず自分だけが話しに行ってもかまいません。

気持ちが沈んで眠れない、食べられない、消えてしまいたいと思う時は、心の相談窓口に電話する方法もあります。こころの健康相談統一ダイヤルは、かけた地域の公的な相談先につながります。受付時間ありの窓口なので、夜や休みの日はよりそいホットライン (24 時間) が話を聞いてくれます。今の時間につながる先はつながる窓口で探せます。

流産の悲しみそのものとの向き合い方は、語られにくい喪失をどう抱えていくかの話にまとめています。周りに理解されない悲しみを一人で抱えていると感じる時は、誰にも認めてもらえない喪失についての話も手がかりになるかもしれません。

温度差に気づいたら、まず相手の出方を表のどの行に近いか照らしてみて、頼みたいことを一つだけ選んでください。「10 分だけ話を聞いて」でも「予定日だった日に時間を取りたい」でもかまいません。落ち着いて話せる時間に、その一言を相手に渡してみてください。

この悩みに合う相談窓口

受付の表示は日本時間で、祝日は考慮していません。ほかの窓口はいまつながる相談窓口で見られます。

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