関係流動性
その社会で人間関係の相手をどれだけ自由に選び、入れ替えられるかを表す社会心理学の概念。2018 年発表の 39 の国・地域を対象にした国際調査では日本が最も低く、友達の作りにくさを個人の性格以外から説明する鍵になる。
関係流動性とは
関係流動性とは、その社会で人々が人間関係の相手をどれだけ自由に選び、入れ替えられるかという、環境側の性質を表す社会心理学の概念である。ポイントは、これが個人の性格ではなく「その人が生きる社会の条件」を測る物差しだという点だ。関係流動性が高い社会では新しい出会いの機会が豊富で、合わない関係からは離れて別の関係を築き直せる。低い社会では所属する集団の枠が固定的で、人間関係は自分で選ぶものというより、学校・職場・土地とともに与えられるものに近くなる。
日本は 39 の国・地域で最下位だった
この概念を世界規模で測定したのが、社会心理学者トムソン、結城雅樹らの国際研究チームが 2018 年に米国科学アカデミー紀要に発表した研究である。39 の国・地域を比較した結果、関係流動性が最も高かったのはメキシコとプエルトリコ、最も低かったのは日本とマレーシアで、日本は 39 の中の最下位だった。地域全体では中南米・北米・西欧で高く、東アジアや中東で低い傾向が見られた。
同じ研究では、関係流動性の高い社会ほど、人々の自己開示や親密さ、見知らぬ人への信頼、自己肯定感が高い傾向も確認された。ただしこれらは相関関係であり、どちらが原因かは確定していないと研究チーム自身が注意を促している。背景としては、田植えのような共同作業を要する生業や、災害などの脅威の歴史が、固定的な関係を保つ社会のあり方と結びついてきた可能性が論じられている。
「友達ができない」は性格のせいとは限らない
この概念が悩みに効くのは、多くの人が自分の性格の問題として抱え込んでいるものを、環境の側から説明し直せるからだ。大人になってから友達が作りにくい。知り合いから友達と呼べる仲まで進むのに時間がかかる。合わない相手とも関係を切れない。これらは関係流動性の低い環境では、むしろ理にかなった行動の結果でもある。
| 関係流動性が高い社会 | 関係流動性が低い社会 | |
|---|---|---|
| 新しい出会い | 機会が多く、関係の候補が常にある | 機会が少なく、候補が固定されがち |
| 関係の続き方 | 魅力を示し合わないと離れていく | 放っておいても枠組みが関係を保つ |
| 優先される行動 | 自己開示や積極的な働きかけ | 嫌われないこと、輪を乱さないこと |
低流動性の環境では、関係を失っても代わりが見つかりにくいため、新しい関係の獲得より拒絶の回避が優先される。深い話を切り出さないのも、嫌われないよう様子を見るのも、その環境への適応である。内気さに見えるものの一部は、環境が形づくった行動だと捉え直してよい。
低い社会でどう動くか
環境のせいだと分かっても、環境は選び直せないことが多い。そこで、低流動性の条件を前提にした動き方を挙げる。第一に、出会いは偶然でなく「場」から作る。定期的に同じ顔ぶれと会う場、たとえば趣味の集まり、学びの場、地域の活動に自分を置くほうが、固定的な社会では関係が育ちやすい。第二に、自己開示は小さく先に出す。誰もが様子見をする環境では、先に少しだけ打ち明ける人の周りに関係が生まれる。第三に、合わない関係は切るより頻度を下げる。共通の知人が多い環境で関係を断ち切るコストは高く、緩やかな距離調整のほうが現実的だ。最後に、固定的な関係の利点も忘れないでほしい。簡単には解消されない関係は、長い時間をかけた安心や、調子を崩したときに放り出されない支えとしても働く。大人になってからの友人づくりと併せて、環境込みで自分の対人関係を眺め直すことが次の一歩になる。
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