キャリアプラトー
昇進や成長の実感が頭打ちになり、キャリアが停滞したと感じられる状態。1977 年に米国の経営学者らが定式化した概念で、組織で長く働くほとんどの人がいつかは通る。停滞の正体を見極めれば打ち手は変わる。
キャリアプラトーとは
キャリアプラトーとは、昇進や昇格の見込みが小さくなり、キャリアの成長が頭打ちになったと感じられる停滞状態を指す。プラトー (plateau) は「高原」の意味で、登り坂が終わって平坦な台地に出る地形になぞらえた言葉だ。1977 年に米国の経営学者ファレンス、ストナー、ウォーレンが学術誌アカデミー・オブ・マネジメント・レビューに発表した論文で定式化された。彼らは複数の大企業の管理職への聞き取りをもとに、管理職のキャリアが初期の急な上昇のあと、避けがたい頭打ちを迎える過程を描き出した。
見落とされがちなのは、この言葉が生まれた時点から「プラトーは避けられない」とされていたことだ。組織はピラミッド型で、ポストは上に行くほど減る。全員が登り続けられる構造には最初からなっていない。つまりキャリアプラトーは能力不足の証明ではなく、長く働けばほとんどの人がどこかで踏む地形である。停滞を感じた自分を責める必要はない。
止まっているのは職位か、仕事の中身か
米国の心理学者ジュディス・バードウィックは 1986 年の著書『The Plateauing Trap』で、プラトーを構造的・内容的・人生の 3 つに分けて論じた。このうち仕事にかかわる構造的・内容的の 2 つの区別は、停滞感の正体を見極めるうえで役に立つ。なお彼女自身は、3 つ目の人生のプラトー (生活全体が平坦になったと感じる状態) を最も深刻なものとして扱っている。
| 構造的プラトー | 内容的プラトー | |
|---|---|---|
| 止まるもの | 昇進・昇格 (組織内の位置) | 仕事の中身の新しさ・挑戦 |
| 典型的なサイン | 同期が先に上がる、ポストの空きがない | 目をつぶってもできる仕事の繰り返し、この 1 年で覚えたことが思い出せない |
| 打ち手の方向 | 昇進以外の成長軸 (専門性・社外) を持つ | 仕事の中身に新しい要素を自分で足す |
役職が止まっていても仕事の中身が広がり続けているなら、それは停滞というより安定に近い。逆に肩書が変わっても同じ作業の繰り返しなら、内容的プラトーは静かに進行している。外から見えにくいのは後者で、本人も気づくのが遅れやすい。挑戦のない日々は、退屈だけでなく、社外でも通用する技能の伸び悩みにつながりやすい。
抜け出すための 3 つの問い
停滞感に気づいたら、次の 3 つを順番に自分に問うてみてほしい。
第一に、止まったのは昇進か、それとも成長か。昇進が止まっただけなら、成長の物差しを組織の階段から外に掛け替えられる。専門性を深める、社外の学びや副業で腕を試すなど、登る以外の伸び方はいくらでもある。第二に、いまの仕事で、組織の外でも通用する技能は増えているか。増えていないなら、待つのではなく仕事の中身を動かす番だ。担当業務に隣接する領域を 1 つ引き受ける、やり方を変えて試すなど、小さな組み替えでも内容的プラトーは崩せる。第三に、そもそも自分はまだ上に行きたいのか。問い直すと「登りたかったわけではない」と気づく人は少なくない。その場合、プラトーは問題ではなく、働き方を自分の価値観に合わせて設計し直す合図になる。複数の役割を組み合わせる働き方のように、階段を登る以外の形は選べる。
次の一歩
まず、この 1 年で新しくできるようになったことを紙に書き出してみるとよい。すらすら書けるなら内容的プラトーはまだ来ていない。ほとんど書けないなら、役職の行方を案じる前に、来月の仕事へ新しい挑戦を 1 つ足すことから始めよう。停滞は登頂の失敗ではなく、次の登り方を選び直す踊り場である。
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