仕事

仕事を休むのが申し訳なくて休めない - 体 / 子の熱 / 心の不調で分ける今日の判断

この記事は約 8 分で読めます

仕事を休むのが申し訳ないと感じるのはなぜか

朝 6 時、熱っぽい体で天井を見ながら、上司に送る文面を打っては消している。休めば誰かが自分の分をかぶる。先週も子どもの熱で早退したばかりだ。この程度で休むのは甘えではないか。そう考えているうちに出発の時刻が近づき、結局いつもの電車に乗ってしまう。この記事は、そういう朝を何度も過ごしてきた人に向けて書いています。

先に結論を書きます。罪悪感の強さは、今日休むべきかどうかの判断材料になりません。判断に使うのは、体と心がどういう状態か、人にうつすおそれがあるか、休んだ場合に仕事のどこが止まるか、の 3 点だけです。申し訳なさは、休むと決めたあとに上手に扱えばよい感情で、休むかどうかを決める席に座らせる必要はありません。

それでも罪悪感が湧くのには、はっきりした出どころがあります。分けてみると、たいてい次の 3 つが絡み合っています。

1 つ目は「迷惑をかける」という感覚です。少人数のチームや、自分しか分からない業務を抱えている人ほど強くなります。ただ、ここで想像しているのは、たいてい最悪の場合です。実際に休んだ日に起きることは、会議が 1 本延期になる、返信が 1 日遅れる、同僚が電話を 2 本受ける、という程度で済むことが少なくありません。迷惑の大きさを具体的な作業に分解すると、頭の中の重さと現実の重さがずれていることに気づきます。

2 つ目は評価への不安です。「休みがちな人」と思われたくない、査定に響くのではないか、という心配です。これは根拠のない心配とは限りません。職場によっては、休む人を露骨に低く見る空気が実際にあります。ただし、熱のある状態で出社してミスを重ねたり、周りにうつしたりするほうが、評価にとってはよほど痛手です。評価を守りたいなら、休まないことより、休むときの連絡と引き継ぎを丁寧にするほうが効きます。

3 つ目は、子どものころから刷り込まれてきた「休むのは甘え」という物差しです。皆勤賞を誇らしく感じた記憶や、熱があっても出勤していた親の背中は、大人になってからも判断の基準として残ります。この物差しは、体が丈夫で、代わりのきかない役割を背負っていた誰かの経験から作られたものです。自分の体と自分の職場に合っているかどうかは、一度確かめ直してよいはずです。

出どころが分かると、罪悪感を消そうとしなくてもよくなります。湧いてくるのは自然なことで、問題はそれに判断を任せてしまうことだけです。以下では、判断の基準そのものを具体的に置いていきます。

今日休むかどうかの決め方 - 理由を 4 つに分けて考える

「休むか、行くか」の二択で考えると、罪悪感に押されて「行く」に倒れがちです。そこで選択肢を「休む」「半日にする (遅れて行く、早めに帰る、在宅に切り替える)」「行く」の 3 つに増やし、休みたい理由を 4 つの型に分けて考えます。次の表は、朝の 10 分で使える目安です。

理由の型休む半日にする行く
体の不調 (熱、吐き気、下痢、強い頭痛など)熱がある、吐いた、下痢が続いている、人にうつすおそれがある朝だけつらく、昼に向けて回復の手応えがあるだるさだけで熱はなく、横になっても眠れないほどではない
子どもの熱や看病子どもに熱がある、預け先が見つからない病児保育や家族に午後から託せる家族が丸 1 日見られて、自分の体も元気
生理痛や PMS痛みで座っていられない、鎮痛薬が効かない薬が効くまでの数時間だけ動けない痛みはあるが、薬と服装の工夫で業務がこなせる
心の不調 (朝の吐き気、涙、体が動かない)玄関で体が止まる、涙が止まらない、眠れない夜が続いている朝だけが特にきつく、出てしまえば落ち着く気が重いだけで、体の症状はない

表を使うときのこつは、迷ったら 1 段左を選ぶことです。「行く」と「半日」で迷ったら半日、「半日」と「休む」で迷ったら休む。罪悪感が強い人は、自分の状態を軽く見積もりがちです。1 段左にずらしてようやく、ほかの人と同じくらいの判断になると考えてください。

体の不調では、人にうつすかどうかが最優先の基準になります。吐き気や下痢、発熱を伴う不調で出社すると、自分が抜けるよりも大きな穴を、数日後にチームへ空けることになりかねません。この場合、休むことは迷惑をかけることではなく、迷惑を小さくする選択です。

子どもの熱については、仕組みを知っておくと罪悪感が少し軽くなります。育児・介護休業法の第 16 条の 2 は、小学校第 3 学年修了前の子を育てる労働者が、病気やけがをした子の世話などのために「子の看護等休暇」を取れると定めています。日数は年度ごとに 5 労働日、対象の子が 2 人以上なら 10 労働日で、1 日未満の単位でも取れる決まりです。つまり、子どもの熱で休むことは、法律が最初から想定している休み方です。賃金が出るかどうかは会社の定めによるので、就業規則で一度確かめておくと、当日に迷わずに済みます。

生理痛についても、労働基準法の第 68 条が「生理日の就業が著しく困難な女性が休暇を請求したときは、その者を生理日に就業させてはならない」と定めています。名目を生理休暇にするか、体調不良として有給休暇にするかは自分で選んでかまいません。周期的に同じ時期がつらいなら、その日の判断だけでなく、受診して痛みそのものを軽くする道もあります。生理の前から気分や体の不調が出る人は、症状の仕組みを PMS がなぜ起きるのかを解説した記事で確かめてください。

心の不調は、4 つの中でいちばん判断が難しい型です。熱のように数字で示せず、自分でも「気の持ちよう」に思えてしまうからです。この型は次の節で、「甘え」かどうかを見分ける方法として分けて扱います。

「行きたくない朝」が甘えかどうかを見分ける方法

仕事に行きたくない朝は、誰にでもあります。苦手な会議がある日、月曜日、長い休みの翌日。こうした日の気の重さは、出てしまえば昼には薄れ、夕方には忘れていることが多いものです。一方で、同じ「行きたくない」の顔をして、体が先に悲鳴を上げている場合があります。両者を分けるのは気合いの量ではなく、次の 4 つの問いです。

1 つ目は、体に症状が出ているかどうかです。朝になると吐き気がする、家を出る時刻が近づくと動悸がする、駅のホームで涙が出る。気分ではなく体が反応しているなら、それは甘えの範囲を超えています。

2 つ目は、休日に戻るかどうかです。土曜の昼には普段の自分に戻っているなら、負担の中心は職場にあり、休めば回復する余地があります。休日もずっと沈んだまま、好きだった番組や食事が楽しめないなら、職場を離れても続く疲れが積み重なっているかもしれません。

3 つ目は、つらさが特定の何かに結びついているかどうかです。「あの上司と顔を合わせる火曜だけ」「締め切りの週だけ」と言えるなら、原因に手を打つ相談ができます。理由が特定できず、毎朝まんべんなく重いなら、心身の余力そのものが減っている合図です。

4 つ目は、期間です。1 日や 2 日の憂うつは誰にでもありますが、朝の吐き気や眠れない夜が週をまたいで続くなら話が違います。この記事では、そうした状態がおよそ 2 週間続いたら、心療内科や精神科、かかりつけ医に一度相談する目安にしてほしいと考えています。受診は診断をもらうためだけのものではなく、自分の状態を外から見てもらう機会です。休めば戻る疲れと、休むだけでは戻らない不調の見分け方は、燃え尽きとうつの違いを整理した記事で詳しく書いています。

ここで、ひとつの場面を考えてみます。事務職の 30 代の人が、3 週間ほど前から朝の歯磨き中にえずくようになりました。出社すれば普通に働けるので「気のせいだ」と流してきましたが、休日も夕方になると胃が重くなり、日曜の夜はほとんど眠れません。この人は「行けているから大丈夫」と考えていますが、4 つの問いに当てはめると、体の症状があり、休日に戻らず、期間も 2 週間を超えています。今日は休むか半日にして、その時間で受診の予約を入れるのが妥当な判断です。出社できていることは、不調が軽い証拠にはなりません。むしろ無理が利いているうちに手を打てる、というだけのことです。

反対に、4 つの問いのどれにも当てはまらず、気が重いだけの朝もあります。その日は行ってかまいません。ただ、午前中に一つだけ楽しみを置く、最初の 30 分は軽い作業から始める、といった小さな工夫で、行く負担を下げておくと続けやすくなります。

当日の連絡は何をどう伝えればよいのか

休むと決めたら、連絡は短いほど良い結果になります。罪悪感が強い人ほど、謝罪と言い訳を重ねた長い文面を書きがちですが、受け取る側が知りたいのは「今日いないこと」「急ぎの件をどうするか」「いつ戻れそうか」の 3 つだけです。長い謝罪は、読む人に「気にしないで」と返す手間を増やします。

理由をどこまで書くかは、自分で選んでかまいません。体調不良とだけ書けば足りることが多く、症状の詳細まで書く必要はふつうありません。生理休暇として取るなら、その名目で請求します。理由の書き方や診断書の扱いが決まっている職場もあるので、そこは就業規則に従います。子どもの熱は、書いておくと翌日以降の調整が話しやすくなるので、伝えておくほうが得なことが多いでしょう。心の不調は、最初の 1 回は「体調不良」で済ませ、続くようなら上司と別に話す場を設ける、という順番でも問題ありません。

型ごとの文面の例を置いておきます。そのまま使っても、職場の言葉づかいに合わせて直してもかまいません。

場面連絡の例
熱や吐き気おはようございます。発熱のため本日はお休みをいただきます。10 時の打ち合わせは○○さんに資料を共有済みです。明日の出社は夕方にあらためてご連絡します。
子どもの熱おはようございます。子どもが発熱したため、本日はお休みします。午後に家族と交代できれば、14 時から在宅で対応します。急ぎの件はチャットで確認できます。
生理痛など言いにくい不調おはようございます。体調不良のため、午前中お休みをいただき、13 時から出社します。午前の問い合わせは午後にまとめて対応します。
心の不調で動けない朝おはようございます。体調がすぐれないため、本日はお休みします。急ぎの対応が必要な件は特にありません。明日の朝にあらためてご連絡します。

どの例にも「申し訳ございません」を重ねていないことに気づいたでしょうか。一言添えたいなら「ご迷惑をおかけします」を 1 回だけで十分です。代わりに、急ぎの件の扱いを具体的に 1 文入れると、受け取る側の安心は謝罪よりずっと大きくなります。引き継ぐことが本当に何もないなら、「急ぎの件は特にありません」と書くだけで、相手は確認の手間を省けます。

連絡する時刻は、始業の 30 分前から 1 時間前を目安にすると、相手が段取りを組み直す余裕があります。夜のうちに体調が怪しいと分かっているなら、前の晩に「明日の朝の様子で休むかもしれません」と一言入れておくだけで、当日の連絡がずっと軽くなります。

休んだ日を有給休暇として扱えるか、当日の申し出でも振り替えられるかは、会社の決まりによって違います。そもそも有給の申請が言い出せないという悩みは、有給を申請できないときの伝え方をまとめた記事で扱っているので、ここでは当日の連絡だけに絞りました。

休んだ日と翌日に罪悪感を引きずらない過ごし方

休むと決めて連絡を送ったあとも、罪悪感は消えません。むしろ布団の中でチャットの通知を何度も確かめ、休んでいるのに半分働いている状態になる人が少なくありません。これでは体も心も回復せず、翌日以降の欠勤が延びる原因になります。

休んだ日は、仕事の連絡を確かめる時刻を 1 日 1 回、たとえば昼の 12 時と決めてしまいましょう。それ以外の時間は通知を切ってかまいません。急ぎの件の扱いは朝の連絡で伝えてあるので、本当に必要なら電話が来ます。確かめる時刻が決まっていると、「何か起きているかもしれない」という落ち着かなさが、ずいぶん小さくなります。

翌日の出社では、謝罪よりお礼を言うほうが、職場の空気は良くなります。「昨日はすみませんでした」を何人にも繰り返すより、代わりに動いてくれた人に「昨日は電話を受けてくださってありがとうございました、助かりました」と具体的に伝えるほうが、相手は報われた気持ちになります。謝罪は自分の罪悪感を軽くするための言葉になりがちですが、お礼は相手のための言葉です。

それでも「借りを作った」という感覚が残るなら、返し方を決めておくと楽になります。同僚が休んだ日に電話を代わりに取る、締め切り前の作業を少し手伝う。職場の休みは、一方的に借りるものではなく、互いに貸し借りして回すものです。自分が借りる側になる日があって当然だと考えられると、休む判断がずっと軽くなります。

子どもの熱が続いて欠勤が重なる時期は、1 日ずつの判断とは別に、上司と体制の話をしておく価値があります。「来月は保育園の行事と予防接種があり、急な休みが出るかもしれません。その場合は午後から在宅で対応する形にさせてください」と先に伝えておけば、当日の連絡は確認だけで済みます。休むたびに謝る状態から、あらかじめ決めた手順で休む状態へ移ると、罪悪感の量は目に見えて減ります。働きながら子どもを育てる後ろめたさそのものとの付き合い方は、別の記事で掘り下げています。

一方で、休むたびに嫌味を言われる、体調不良で休んだことを理由に不利な扱いを受ける、子の看護等休暇を申し出たのに認められない、といった状況は、自分の罪悪感の問題ではありません。職場の側の問題として、外の窓口に相談してよい場面です。

次の朝に迷わないために、今夜決めておくこと

罪悪感が強い人にとって、いちばん苦しいのは朝の判断そのものです。熱のある頭で、時計を見ながら文面を考えるのは誰にとっても難しい作業です。だからこそ、元気な今夜のうちに、判断と連絡の段取りを済ませておくと、次の朝の負担が大きく変わります。

やっておくことは 3 つです。1 つ目は、この記事の表を見て、自分がよく迷う型を 1 つ選び、「この状態なら休む」という線を自分の言葉で書き出しておくことです。スマートフォンのメモに「朝に吐いたら休む」「子どもに熱があって預け先がなければ休む」と残しておけば、朝の自分はそれに従うだけで済みます。

2 つ目は、連絡の文面の下書きを、上の例を参考に 1 つ作って保存しておくことです。宛先と送る手段 (チャットか、メールか、電話か) も一緒に決めておきます。文面ができていれば、朝は日付と急ぎの件を書き換えて送るだけです。

3 つ目は、就業規則か社内の案内で、子の看護等休暇や生理休暇の扱い、当日の有給の振り替えができるかを確かめておくことです。仕組みを知っているだけで、「休んでいいのだろうか」という迷いの半分は片付きます。

朝の吐き気や眠れない日が続いていて、誰かに話を聞いてほしいと感じているなら、厚生労働省の働く人のメンタルヘルス・ポータルサイト「こころの耳」に、電話や SNS、メールで匿名のまま相談できる窓口があります。休むことを理由に不利な扱いを受けているなど、職場の扱いそのものに疑問があるときは「労働条件相談ほっとライン」が相談先になります。子の看護等休暇が認められないときは、育児・介護休業法を担当する都道府県労働局の雇用環境・均等部 (室) にも相談できます。どちらもつながる窓口のページから探せます。

休むことは、仕事から逃げることではなく、明日もその仕事を続けるための手段です。次に熱が出た朝、あなたが布団の中で長い謝罪文を打たずに済むよう、今夜のうちにメモを 1 行だけ書いておいてください。

この悩みに合う相談窓口

受付の表示は日本時間で、祝日は考慮していません。ほかの窓口はいまつながる相談窓口で見られます。

この記事を共有

関連記事