誘いを断ると気まずくなるとき - 嘘の理由を使わずに済ませる方法
嘘の予定を作ってしまう
「今度の土曜、空いてる?」。空いています。でも行きたくない。そこで口から出るのは「その日は用事があって」。
実際には何もない土曜日が、こうして予定のある土曜日に変わります。その場は収まり、相手も納得します。うまくいったように見えます。相手を落胆させたくない気持ちが先に立って自分の希望を後回しにする傾向は、ピープルプリージングと呼ばれます。
しかしこの方法には、後から効いてくる副作用があります。
嘘が次の断りを難しくする
まず、嘘は記憶の管理を要求します。何の用事だと言ったか、誰にどう説明したか。後の会話で辻褄が合わなくなると、断ったこと以上に気まずい状況が生まれます。
次に、断りの条件が「予定があること」に固定されます。予定がなければ行くべきだという前提を自分で作ってしまうため、次に誘われたときも予定を捏造しなければなりません。断る回数だけ嘘が増えていきます。
そして最も影響が大きいのは、行きたくないという理由が使えないものとして扱われる点です。予定を持ち出すのは、行きたくないという気持ちだけでは断る資格がないと自分が判断しているからです。この前提を置いたまま断り続けると、断るたびに自分の気持ちを不当なものとして扱うことになります。断った直後に湧く罪悪感が回を重ねても薄れないのは、断り方が下手だからではなく、この前提が残っているからです。
理由を言わない断り方
断るのに理由は要りません。誘いは依頼であり、依頼への応答は諾否だけで完結します。相手を攻撃せず、自分を偽らずに意思を伝えるこの姿勢はアサーティブネスと呼ばれ、断ることはその最も基本的な形です。
使いやすい形は 3 つあります。
ひとつは、単純に不参加を伝える形です。「今回は遠慮します。誘ってくれてありがとう」。理由の部分を感謝で埋めると、断りだけが残らずに済みます。
ふたつめは、次の機会に言及する形です。「今回は行けないけど、また声をかけて」。関係を続けたい相手に有効です。ただし本当にまた誘われても構わない場合にだけ使います。
みっつめは、自分の状態を述べる形です。「最近は人の多い場所が疲れるので、少人数のときに呼んで」。これは嘘ではなく、どこまでなら応じられるかという線、つまりバウンダリーを言葉にする形です。相手に情報が渡るため、次回以降の誘いが自分に合ったものに変わる可能性があります。
どの形でも共通するのは、説明を長くしないことです。理由を詳しく述べるほど、その理由の妥当性を相手が判定する余地が生まれます。短い断りのほうが押し戻されにくいのは、判定する材料がないからです。
行くと決めたときの負担の下げ方
断らずに参加すると決めた場合、行き方を自分で設計できます。
先に帰る時刻を決めておくのが最も効きます。「9 時には出ます」と最初に伝えておくと、途中で抜けることが約束の履行になります。何も言わずに抜けると気まずさが残りますが、宣言してあれば問題になりません。
参加の形を部分的にする方法もあります。食事だけ出て二次会には行かない、後半から合流する。全部か無かで考えると断るしかなくなりますが、部分的な参加なら選択肢が増えます。
断り続けた後の関係
何度も断ると、誘いが来なくなります。これは自然な結果です。相手は拒絶されたと感じているわけではなく、来ない人だと学習しただけです。
ここで確かめたいのは、その結果が自分にとって望ましいかどうかです。誘いが来なくなって楽になったなら、それは適切な調整でした。寂しさが残るなら、断る基準が厳しすぎたということです。
後者の場合、こちらから誘う側に回るのが有効です。自分が場所と人数と時間を決められる誘いなら、参加の負担が下がります。断る回数を減らすより、自分に合った形の集まりを作るほうが実際に人と会えます。
関係を保ちたい相手には、集まりとは別の経路で連絡を取る方法もあります。集団の場が苦手でも、一対一なら話せる場合は多い。誘いを断ったからといって、関係を維持する手段がなくなるわけではありません。
職場の集まりという特殊な場
職場の飲み会や社内の行事は、私的な誘いと少し性質が違います。参加が評価に影響するという不安が加わるためです。
まず確かめたいのは、その不安が実際の慣行に基づくものか、想像かです。不参加が評価に影響する職場は実際にありますが、思い込みで参加し続けている場合もあります。周囲の不参加者がどう扱われているかを見れば、おおよそ判断できます。
参加が事実上必要な職場では、頻度を自分で管理する方針が現実的です。すべて出るのでもすべて断るのでもなく、年に何回は出ると決めておく。歓送迎会のような節目には出て、日常の飲み会は断る、といった線引きが使えます。
そして、不参加を理由に不利益な扱いを受けている場合は、断り方の問題ではありません。業務時間外の私的な集まりへの参加を評価に反映させることは、業務上の判断として正当化されません。断るときに湧く後ろめたさの扱い方を押さえた上で、事実を記録して相談する道を検討してください。
誘いを断ることは、相手を拒むことではなく、自分の時間の使い方を決めることです。嘘の予定を作らずに断れるようになると、断ること自体の心理的な費用が下がり、行きたい誘いには素直に行けるようになります。