喪失 / 悲嘆

人の苦しみを聞き続けて動けなくなるとき - 共感疲労の兆しと戻り方

この記事は約 2 分で読めます 執筆 / 運営: ここもり

聞くことが苦しくなる日

病気の家族の話を、毎日聞いている。最初は自然に頷けた。心から心配していた。

しかし数か月が経ったころ、変化に気づきます。話が始まると、体が重くなる。同じ内容の繰り返しに苛立つ。相手が眠っているあいだだけ、息がつける。そして、そう感じる自分を責めます。

人の苦しみに触れ続けた結果として生じるこの消耗は、共感疲労と呼ばれます。支援を仕事にしている人については以前から扱われてきましたが、家族や友人を支える立場には、職業とは違う条件が加わります。

役割を降りられない立場

職業として人を支える場合、勤務時間が終われば役割が解除されます。担当を交代でき、休暇も取れます。同僚と状況を共有でき、経験の蓄積もあります。

家族や身近な人を支える立場には、これらがありません。

勤務時間の区切りがなく、夜も休日も同じ役割が続きます。交代する相手がいないことも多い。専門的な訓練を受けていないため、対応の方法を自分で探すことになります。そして、支えている相手との関係が近いほど、相手の苦しみが自分の苦しみとして入ってきます。

この条件の違いは、消耗の速度に影響します。同じ内容の支援でも、逃げ場のない立場で担うほうが早く限界に達します。

そして、支え手であることが周囲から当然の役割として扱われるため、負担を言葉にする機会がありません。「大変ですね」と言われても、その先の話が続かない。

麻痺として現れる兆し

消耗の初期には、疲労感より先に感情の変化が現れることがあります。

相手の話を聞いても何も感じなくなる。心配していたはずなのに、義務として対応している。以前は涙が出た場面で、何も動かない。

この平板化は、防御として働いています。強い感情を受け取り続けると処理が追いつかなくなるため、受け取る量そのものを絞る。無意識のうちに行われる調整です。

本人はこの変化を、冷たくなったと解釈します。相手を大切に思っていないのではないか、支える資格がないのではないか。この解釈が罪悪感を生み、罪悪感が消耗をさらに進めます。

しかし順序は逆です。感じなくなったのは冷たくなったからではなく、感じ続けた結果です。消耗の指標として読むほうが正確です。

他に現れる兆しとして、次のようなものがあります。相手の話を聞きながら別のことを考えている。連絡が来ると身構える。眠りが浅くなった。以前楽しめたことに手が伸びない。相手に対して強い苛立ちが湧く。

距離を取ることへの罪悪感

消耗に気づいた後、多くの人が距離を取ることを検討します。そしてすぐに、それを退けます。

相手は自分より苦しい。自分が離れたら誰が支えるのか。この考えは事実を含んでいるため、反論しにくい。

ここで確かめておきたいのは、支え手が倒れた場合に何が起きるかです。支援は止まります。相手には支えがなくなり、代わりを探す必要が生じます。距離を取ることを拒み続けた結果として、支援そのものが失われます。

だから休息は、自分のためだけの行為ではありません。支援を続けるための条件です。この位置づけにすると、罪悪感の扱いが少し変わります。

実際にできる距離の取り方は、完全に離れることだけではありません。連絡に応じる時間帯を決める、一日のうち数時間は別の場所にいる、週に一度は他の人に代わってもらう。部分的な距離でも、消耗の進行は変わります。

自分の回復に必要な時間

支え手の回復について、押さえておきたい点があります。

消耗した状態からの回復には、支援していない時間が必要です。しかし短い休みでは足りない場合があります。数時間の休息で戻るのは疲労の一部であり、感情の平板化は時間がかかります。

そして、回復のために必要なのは休息だけではありません。自分の感情を出す場が要ります。支援の場では、自分の感情を抑えて相手に合わせています。抑えた分を出す場所がないと、抑制が固定されます。

出す相手は、支援の対象ではない人であることが重要です。相手に負担を伝えると、相手の罪悪感を増やします。第三者、あるいは同じ立場の人との場が要ります。

支援に関わる人の消耗そのものの解説と、介護を担う人が自分を守るための考え方は、この回復の設計を扱っています。

支え手が使える相談先

支え手の立場で使える窓口は、実際に複数あります。

介護を担っている場合は、地域包括支援センターが相談の入口になります。介護されている人のためだけでなく、介護している人の相談も業務の範囲です。使える制度、負担を減らす方法、同じ立場の人が集まる場の情報が得られます。

精神的な健康の相談としては、自治体の精神保健福祉センターが使えます。支えている相手についての相談も、自分自身についての相談も扱われます。

同じ立場の人が集まる場も、有効に働きます。説明が短く済み、抱えている感情を出しても責められない。孤立が消耗を強めるため、この種の場が持つ意味は大きい。

そして、自分自身が医療の対象になる可能性も考えておいてください。眠れない、気分が落ちたまま戻らない、体の症状が続く。支える立場にある人が受診することは、支援を放棄する行為ではありません。支え続けるために必要な手当てです。

この記事を共有

X で共有 はてなブックマークに追加

関連記事

メンタル

共感疲労という燃え尽き - 他人の痛みに対する感受性が高すぎる人へ

人の悩みを聞くと自分まで苦しくなる、ニュースを見ると心が重くなる。共感力が高いがゆえに消耗する「共感疲労」のメカニズムをバーンアウトとの違いから解説し、 HSP 気質の人が感受性を強みとして活かしながら自分を守るための境界線の引き方とセルフケア法を紹介します。