パートナーシップ

シチュエーションシップ

恋人のように会い続けているのに、関係に名前を付けず定義もしないままの曖昧な間柄。situation (状況) と relationship (関係) を組み合わせた造語で、2020 年代にマッチングアプリ世代を中心に広まった。

シチュエーションシップとは

シチュエーションシップ (Situationship) とは、デートを重ね、連絡を取り合い、ときに身体の関係もあるのに、「私たちは何なのか」という関係の定義だけが宙に浮いたままの曖昧な間柄を指す。situation (状況) と relationship (関係) を組み合わせた造語で、英語圏で 2010 年代後半から使われ始め、2020 年代にマッチングアプリ世代を中心に日本でも知られるようになった。友達以上恋人未満と似ているが、昔ながらの「片思いの途中経過」ではなく、実質的には恋人同士の行動をしながら定義だけを避け続ける点に現代的な特徴がある。

なぜ生まれるのか

背景には、関係を定義しないことが双方にとって一時的に合理的に見える構造がある。定義しなければ、別れの手続きも、相手の家族や友人との関わりも、将来の話も発生しない。選択肢を狭めたくない側にとっては都合がよく、傷つくのが怖い側にとっては「振られる」瞬間を無期限に先送りできる。マッチングアプリで常に代替候補が見える環境は、この先送りをさらに容易にした。ただし、心地よい自由に見える状態は、多くの場合どちらかの「本当は定義してほしい」という希望を沈黙させることで成立している。

問題になるのはどんなときか

シチュエーションシップ自体が常に悪いわけではない。双方が本当に同じ温度で「今は定義しない」ことに合意しているなら、それは一つの選択だ。問題は温度差があるときに起こる。定義を望む側は「聞いたら壊れる気がする」という不安から質問を飲み込み、宙づりの状態が数か月から数年単位で続くことがある。この間、関係の保証がないまま感情だけが深まっていくため、終わったときの喪失感は正式な交際の別れと変わらないか、「そもそも失恋と名乗る資格があるのか」という周囲に理解されにくい悲しみの分だけ重くなることもある。

似た関係との違い

関係特徴シチュエーションシップとの違い
友達以上恋人未満交際に向かう途中段階という共通了解があるシチュエーションシップは「向かう先」の合意自体がない
セフレ (身体だけの関係)関係の範囲が身体に限定されると双方が了解デートや日常の共有など恋人相当の行動を伴う
ブレッドクラミング実質的な交流がほぼなく、思わせぶりだけが続くシチュエーションシップは実際に会い、関係の実体がある

シチュエーションシップが残す見えないコスト

定義のない関係の最大のコストは、時間でも感情でもなく「選択の凍結」だ。この関係がどこへ向かうか分からない間、引っ越し・転職・他の出会いといった人生の分岐が、無意識のうちにすべて保留になる。しかも保留している自覚が持ちにくい。「聞けばはっきりするが、はっきりさせるのが怖い」という状態が長引くほど、すでに費やした時間が惜しくなり、ますます聞けなくなるというサンクコストの罠も働く。カレンダーを見返して「この関係の答えを待っている期間」が何か月に及んでいるかを数えてみると、コストが具体的な数字として見えてくる。

相手に「私たちって何?」と聞いてもいい?

聞いていい。むしろ、聞けない関係が続いていること自体が答えの一部だ。切り出すときは、相手を問い詰める形ではなく「自分はこの関係をこう感じていて、これからどうしたいか知りたい」と自分を主語にすると対話になりやすい。はぐらかされ続ける場合、それは「定義しない」という定義が示されたということであり、その条件で続けるかどうかの決定権は自分の側にある。健全な境界線の引き方は、この決定を実行する土台になる。

抜け出すか、続けるかの判断軸は?

判断の軸は「この関係は自分の望む生活に近づいているか」の一点でいい。半年前と比べて安心感が増えているか、それとも通知に一喜一憂する時間が増えただけか。マッチングアプリ疲れの渦中では判断力そのものが落ちるため、一度立ち止まって書き出してみることが有効だ。双方に意思があるなら、関係を定義して親密さを深める段階に進めばいいし、温度差が埋まらないなら、名前のない関係にも終わりを告げていい。名前がなかったことは、悲しむ資格がないことを意味しない。

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