パートナーシップ

友情結婚

恋愛感情や性的関係を前提とせず、信頼と生活の支え合いを土台に法律上の婚姻を結ぶ形。届け出れば夫婦としての権利義務がそのまま生じるため、決める前に言葉にしておくべき論点が多い。

友情結婚とは何を選ぶことなのか

友情結婚とは、恋愛感情や性的関係を関係の前提に置かず、信頼と生活の支え合いを土台にして法律上の婚姻を結ぶ形を指す。友情婚とも呼ばれる。選ぶ人の背景はひとつではない。他者に恋愛感情や性的な欲求を抱かない人、同性を好きになる人、恋愛には価値を置かないが生活の伴走者は求める人、そして家族という単位そのものを望む人が含まれる。

最初に押さえておきたいのは、これが「軽い結婚」ではないという点だ。婚姻届が受理されれば法律上の夫婦であり、民法 752 条は「夫婦は同居し、互いに協力し扶助しなければならない」と定めている。恋愛感情の有無によって法的な扱いが変わるわけではないため、権利も義務も通常の婚姻と同じように生じる。感情の負荷が小さい代わりに、生活と制度の重みはそのまま引き受けることになる。

広まっている四つの誤解

ひとつめは、嘘の結婚と同じものだという見方だ。目的を偽って届け出る行為とは、双方が結婚する意思を持ち、実際に生活を共にしようとしている点で前提が異なる。もっとも、個別の事案がどう評価されるかは事情によって変わるため、在留資格や相続などが絡む場合は自分たちの状況を弁護士や法テラスなどの窓口で確認しておくのが安全である。

ふたつめは、性的関係がないだけで他は普通の結婚だという見方だ。実際にはその逆で、恋愛結婚が暗黙のうちに共有してしまう前提が最初から存在しないため、言葉にしておかないと後で食い違う領域が多い。曖昧なまま始めることが、この形における最大の落とし穴である。

みっつめは、特定のセクシュアリティの人だけの選択肢だという見方だ。性的指向や恋愛的指向を問わず、価値観の一致と生活の安定を重視して選ぶ人もいる。

よっつめは、いちど交わした合意が永続するという前提だ。どちらかに恋愛感情が芽生えることも、第三者を好きになることも、子どもを望む気持ちが後から強くなることもある。合意は最初に固めて終わりにするものではなく、更新される前提で持つほうが現実的である。

決める前に言葉にしておく論点

友情結婚の成否を分けるのは、相性よりも取り決めの解像度だと言っていい。次の論点は、曖昧にしたまま進むと後から必ず問い直されることになる。

論点曖昧なまま進むと起きること
子どもを持つか持つ場合の方法も持たない場合の合意も、後から一方が翻すと関係の根幹が崩れる
性的関係の扱い「なし」の合意だけでは足りず、第三者との恋愛や性関係を認めるかで前提が変わる
第三者との関係の開示認める場合、どこまで伝えるかを決めていないと不信が蓄積する
住まい同居か別居か。別居を選ぶなら、その形で互いが納得できているかを確認する必要がある
家計と資産収入の扱い、生活費の分担、共有と個別の線引きが決まっていないと日常が争点になる
親族への説明どこまで伝えるかを二人で揃えていないと、片方だけが説明の負荷を負う
病気と介護入院や介護の場面で誰がどこまで担うのか。実務と気持ちの両方を要する
解消するときの条件どういう状態になったら関係を見直すのか。決めておくことが関係を守る

これらは疑いから出る質問ではなく、二人の関係を長持ちさせるための設計図だ。恋愛から始まる関係では感情が接着剤の役目を果たすが、友情結婚では合意そのものが接着剤になる。話し合いを面倒に感じるかどうかは、そのまま相性の指標にもなる。

他の選び方との違い

望んでいるものが婚姻という形なのか、それとも共同生活なのかを切り分けると判断しやすくなる。

友情結婚恋愛から始まる結婚法的関係を結ばない同居
法的な結びつきありありなし
性的関係の前提置かない置かれることが多い関係によって異なる
揺らぎやすい点合意の更新、周囲への説明感情の変化、性生活のずれ病気や死別の場面での立場
向いている場合家族という単位と法的な安定を望む恋愛と生活を同じ相手に重ねたい制度に縛られず関係を持ちたい

制度の話の前にある感情

この選択をめぐる本当の難所は、条件のすり合わせより前の段階にあることが多い。自分の感じ方を誰にも打ち明けられない年月、周囲の「そのうち好きな人ができる」という言葉に何も返せない場面、そして選んだあとに向けられる「本物の結婚ではない」という視線。親に説明する場面では、自分のセクシュアリティを開示するかどうかという別の重い判断が重なることもある。

だが、二人が納得して共に生きる形を選ぶことに、他人の採点が必要なわけではない。周囲の理解が得られないまま孤立して追い詰められているときは、匿名で話せる窓口を使ってほしい。相談先は つながる窓口 にまとめてある。誰かに一度言葉にするだけで、判断の視界が戻ることは少なくない。

次の一歩として現実的なのは、相手候補と向き合う前に、先の表の八つの論点について自分の答えを一人で書き出しておくことだ。譲れないものと譲れるものが自分の中で分かれていないうちは、相手と話しても着地しない。そのうえで婚姻の法的な効果や取り決めを文書に残す方法を検討する段階に入るなら、事情によって扱いが変わる領域なので、弁護士や法テラスといった専門の窓口で自分たちの条件に沿った確認を取るのが確実である。

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