食 / 栄養

フードネオフォビア

食べたことのない食べ物を避けようとする傾向。子どもでは 2 歳から 6 歳に最も強くなり、大人にも個人差のある性質として残る。少量を何度も出す方法に効果が確かめられている一方、限界も分かっている。

「食べたことがないから嫌い」は矛盾していない

フードネオフォビアとは、食べたことのない食べ物を避けようとする傾向を指す。特徴的なのは、味を確かめる前の段階で拒む点にある。研究上も、見た目の時点での拒否として記述される。だから「食べてもいないのに嫌いなんて変だ」という大人の反論は、この傾向の中身をとらえていない。口に入れる前に判断するのが、この傾向の定義そのものだからだ。

これは気分の波ではなく、人ごとに強さの違う性質として測ることができる。パトリシア・プライナーとカレン・ホブデンは 1992 年に Appetite 誌へ発表した論文で、この傾向の強さを測る尺度を作っている。誰にでもある構えで、その強さに幅がある。自分や子どもを異常だと思う前に、この前提を置いておきたい。

2 歳から 6 歳に強まる - しつけの失敗ではない

子どもの場合、この傾向は生涯を通じて一定ではない。2021 年に Foods 誌へ発表された研究の記述では、この段階は 2 歳から 6 歳のあいだに頂点を迎える。歩き出し、行動範囲が広がる時期と重なる。食べ物が安全かどうかを見た目から判断しようとする生まれつきの傾向によるものとして説明されている。

この時期を知っているだけで家庭の空気は変わる。急に野菜を食べなくなったのは、親の作り方が悪くなったからでも育て方を間違えたからでもない。それまで何でも口に入れていた子が選び始めたという意味では、順序どおりの変化だ。子どもの側の対応は偏食への向き合い方で具体的に扱っている。

大人になっても残る

この傾向は幼児期だけのものではない。プライナーとホブデンの尺度が大人を対象に作られているとおり、強さの個人差は大人にも残る。困り方は子どもと違う。取引先との会食で出てきた皿に手が伸びない。旅先で名物を勧められて断り方に困る。体のために食材を変えたほうがよいと分かっていても、知らないものが増える変更だけ実行できない。

そして多くの場合、困っているのは味覚ではなく人間関係のほうだ。好き嫌いが多い人だと思われたくなくて、食べられないと言えないまま皿を前にして固まる。これは意思の弱さではない。何を食べるかは、その人の育ちや性格の証明書ではない。

少量を何度も - 分かっていることと、分かっていないこと

対処として最も検証されているのは、少量を何度もくり返して出す方法である。キャサリン・アップルトンらが 2018 年に American Journal of Clinical Nutrition へ発表した系統的レビューは、43 本の論文に含まれる 117 の比較を集約し、くり返し出したほうが出さない場合より好みも摂取量も高くなることを確認した。同時にこのレビューは、効果の大きさは小さく、長期にわたる証拠は限られていると釘を刺している。効くが、劇的ではない。

回数と頻度についてはさらに具体的な報告がある。2021 年に Foods 誌へ発表された研究は、デンマークの保育施設に通う 3 歳から 6 歳の 159 人に、その土地では馴染みのない大根を 7 回提示した。週 2 回、週 1 回、隔週の三つの頻度を比べたところ、どの頻度でも好みと摂取量は上がり、特定の頻度を推奨できる差は出なかった。摂取量が伸びたのは 4 回目までで、そこから先は横ばいになった。さらに、大根で起きた変化はきゅうりやブロッコリーへ自動的には広がらなかった。

この結果から言えること言えないこと
少量でも回数を重ねる価値はある何度も出せば必ず好きになる
頻度は生活の都合で決めてよい毎日出さないと意味がない
4 回前後で反応の変化は見えてくる1 回断られた時点で結論を出せる
広げたい食材は 1 品ずつ扱う一つ食べられたら他も食べられる

大人が自分に適用するなら、こう組み替えられる。ひと皿まるごとではなく一口分だけ、慣れた味付けに載せて、気が向いたときに何度か出す。反応を見るのは 4 回ほど経ってから。品目を一つずつにすれば、同時に三つ増やそうとして全部失敗する消耗を避けられる。

偏食との線引きと、受診の目安

ここは自己判断で片づけないほうがよい領域である。医学的には、食べる量そのものが不足したり特定の食べ物を避けたりすることを特徴とする摂食症として、回避・制限性食物摂取症という枠組みがある。MSD マニュアル家庭版の解説では、これは典型的には 11 歳から 13 歳のあいだに始まり、当初はこの時期によくみられる偏食との区別が難しいとされる。区別の手がかりとして、偏食で問題になるのは一般に数種類だけで、食欲は正常、食事量も足りており、成長や発達も正常であることが挙げられている。

フードネオフォビア偏食回避・制限性食物摂取症
何を指すか未知の食べ物を避ける傾向という性質特定の食べ物を食べない状態医学的な診断の枠組み
対象の広さ食べたことがないものが対象一般に数種類食べる量そのものが不足する
体の状態強さの指標であって体の状態は示さない食欲・成長・発達は正常顕著な体重減少や重度の栄養不良を伴う
まずどうするか少量を何度も出す無理に食べさせない医療機関に相談する

同解説は、はっきりした体重減少、子どもで見込まれる発育がみられないこと、重度の栄養不良、経管栄養や補助食品が必要な状態、通常の社会活動や人との交流に大きな困難を抱えていることを、医師が疑う目安として挙げている。栄養不良は生命が脅かされることもあるとされ、治療には認知行動療法や家族を含めた治療が用いられる。ここに近い状態なら、工夫を積む段階ではなく相談する段階だ。

次の一歩

今日できることは二つに絞れる。一つは、食べられるものの一覧を書き出すこと。食べられないものを数えるのは簡単だが、手元にある選択肢を並べると想像より足りていることが多い。もう一つは、増やしたい品目を一つだけ決め、一口分を何度か出す形にしておくこと。回数を数えるだけなら、うまくいったかを毎回判定しなくてよくなる。体重や成長に影響が出ているなら、この二つより先に受診の相談を置くこと。

関連記事

← 用語集に戻る