同性の友達を好きになってしまった - 名前を急がずに気持ちと関係を守る考え方
同性の友達を好きになった自分は何者なのか - 答えを急がなくていい理由
いつもの店で向かい合ってご飯を食べているとき、相手が笑った顔から目が離せなくなる。別れたあと、駅のホームで次に会える日を数えている。相手に恋人ができたと聞いた夜は、理由の分からない苦しさで眠れなかった。そこでようやく、自分がこの友達を好きなのだと気づく。相手は同性で、何年も一緒に過ごしてきた大切な友達です。
この気づきは、たいてい二重の衝撃を連れてきます。ひとつは、友情が壊れるかもしれないという怖さ。もうひとつは、「同性を好きになった自分は何者なのか」という問いです。同性愛者なのか、両性愛なのか、この人だけが特別なのか。答えを出さなければ前に進めないような気がして、検索を繰り返している人もいるでしょう。
最初に伝えたいのは、その問いに今夜答えを出す必要はない、ということです。いま決めなければならないのは、「自分は何者か」ではなく、「この気持ちと、この友情をどう扱うか」だけです。この 2 つは別の問いで、前者の答えが出ていなくても、後者は十分に決められます。
名前を急がなくてよい理由は 3 つあります。1 つ目に、特定の 1 人への気持ちが、そのまま自分全体のあり方を決めるわけではありません。これまで異性だけを好きになってきた人が、ある同性の友達にだけ強く惹かれることもあれば、この経験をきっかけに、以前から感じていた違和感がつながることもあります。どちらであっても、確かめる時間は、自分のものとして持っていてかまいません。
2 つ目に、急いでつけた名前は、かえって自分を縛ります。「同性愛者なら、こうしなければ」「違うなら、この気持ちは勘違いだ」と、名前の側に気持ちを合わせ始めてしまうからです。性のあり方の幅について知っておくことは、自分を責めずに眺める助けになりますが、知識は答え合わせのためではなく、自分の気持ちを否定しないための道具として使ってください。
3 つ目に、名前がつくのは多くの場合、あとからです。数か月、数年かけて、何人かとの関係を経て、「自分にはこの言葉がしっくりくる」と感じる人もいれば、最後まで特定の言葉を選ばない人もいます。どちらの生き方にも優劣はありません。
だからこの記事では、気持ちの名前ではなく、気持ちの中身と、それをどう扱うかを順に考えていきます。
名前ではなく「何を望んでいるか」で気持ちを確かめる
同性の友情は、もともと距離が近いことがあります。手をつなぐ、同じ部屋に泊まる、毎日連絡を取り合う。そうした近さがあるぶん、「これは友情なのか、それ以上なのか」の境目が自分でも分かりにくくなります。境目を言葉で決めようとすると堂々巡りになるので、代わりに「自分はこの人と、何を望んでいるか」を具体的に書き出してみてください。
望んでいるものによって、次に考えるべきことが変わります。目安を表にまとめました。どれか 1 つに当てはまる必要はなく、複数が混ざっているのが普通です。
| 強く感じること | よくある場面 | 次に自分へ向ける問い |
|---|---|---|
| この人のようになりたい | 相手の服装や話し方を真似したくなる、褒められると何日も嬉しい | 惹かれているのは相手そのものか、相手が持っている何かか |
| もっと一緒にいたい | 会えない週末が長く感じる、予定を相手に合わせてしまう | いまの頻度で会えていれば満たされるか、それとも別の関係を望んでいるか |
| 自分だけを見てほしい | 相手の恋人や新しい友達の話を聞くと胸が苦しくなる | 相手に恋人がいても友達として隣にいられるか |
| 触れたい、恋人として扱われたい | 手が触れた瞬間を何度も思い出す、恋人同士の場面を想像してしまう | この気持ちを抱えたまま、いまの距離で会い続けられるか |
表の下の 2 行 (自分だけを見てほしい、触れたい) に近いほど、いまの友情の形のままで気持ちを満たすのは難しくなります。逆に上の 2 行が中心で、会える頻度が保たれていれば落ち着くなら、急いで何かを変えなくてもよい場合が多いでしょう。どの行に当てはまっても、それで気持ちの価値が決まるわけではありません。あくまで、次の判断のための材料です。
書き出すときには、紙かスマートフォンのメモに、誰にも見せない前提で正直に書いてください。人に話す前に、まず自分に向かって言葉にすることで、頭の中で渦を巻いていた感情が、扱える大きさに分かれていきます。
伝える / しまっておく / 距離を置くの決め方
気持ちの扱い方は、大きく分けて 3 つです。気持ちを伝える、伝えずに胸にしまっておく、少し距離を置く。どれが正解ということはなく、相手との関係や、自分がいまの状態にどれくらい耐えられるかで選び方が変わります。友達への片思い全般に共通する考え方は、友達を好きになったときの告白の決め方をまとめた記事に譲り、ここでは相手が同性のときに比重が増す点に絞ります。
同性の友達への告白は、恋の告白であると同時に、自分の性のあり方を相手に打ち明けることにもなります。しかも、相手の受け止め方は、異性への告白よりも読みにくいことが多いものです。そのため判断の軸は、次の 4 つに置くと整理しやすくなります。
1 つ目は、相手がこの話題をどう受け止める人かが見えているかどうかです。テレビや会話で同性の恋愛の話題が出たとき、相手がどう反応していたかは大きな手がかりになります。笑いの種にしていた、嫌悪を口にしていたという記憶があるなら、伝える前にもう少し様子を見るほうが安全です。
2 つ目は、もし相手が受け止めきれなかったとき、自分の秘密がどこまで広がりうるかです。共通の友人が多い、同じ職場や学校にいる、という関係では、相手が悪意なく誰かに相談しただけで、自分の知らないところで話が回ることがあります。
3 つ目は、友情を失ったときの痛みの大きさです。その人が唯一の親友で、ほかに頼れる人がいない状況なら、伝えるのは自分の足場を固めてからでも遅くありません。
4 つ目は、いまの距離で会い続けることが、自分にとってどれくらいつらいかです。相手の恋人の話を聞くたびに何日も引きずる、会ったあとに必ず泣いてしまう、という状態が続くなら、伝えないまま同じ距離にいることが、いちばん自分を傷つけている可能性があります。
| 選び方 | 向いている状況 | 覚悟しておくこと |
|---|---|---|
| 伝える | 相手の受け止め方がある程度見えている、伝えないままのつらさが限界に近い | 関係が変わる可能性、返事が望むものでないこと |
| しまっておく | 友情そのものを何より守りたい、いまの距離で気持ちが落ち着いている | 相手に恋人ができたときの痛み、気持ちが長く続くこと |
| 距離を置く | 会うたびに苦しい、相手に恋人や配偶者がいる、自分の生活が回らない | 相手に理由を聞かれること、寂しさが一時的に強まること |
ひとつ付け加えると、この 3 つは一度選んだら終わりではありません。しばらくしまっておいて、気持ちが落ち着かなければ距離を置き、時間がたってから伝える、という順番もありえます。今夜決めるのは「当面どうするか」で十分です。
しまっておくと決めた場合は、気持ちに蓋をするより、置き場所を作るほうが長続きします。誰にも見せないノートに書く、匿名で話せる窓口で一度言葉にしてみる、同じ経験をした人の体験記を読む。抱えている重さは、外に出す回数に比例して軽くなっていきます。
打ち明けるときに、相手と自分の秘密を守る方法
伝えると決めたなら、気持ちをどう言うかと同じくらい、どこで、どんな形で言うかが大切になります。同性への告白では、自分の性のあり方という、本来は自分で開示の範囲を決めるべき情報を相手に預けることになるからです。本人の了解なく、その人の性のあり方を第三者に話してしまうことはアウティングと呼ばれ、話された側の居場所を奪いかねない行為です。告白は、相手にその情報を預ける行為でもあると意識しておくと、準備するべきことが見えてきます。
場所は、二人きりで、ほかの人に聞かれない所を選びます。お酒の席や、共通の友人がいる集まりの帰り道は避けてください。勢いで伝えると、相手も勢いで反応してしまいます。文字で送るかどうかは迷うところですが、メッセージは画面ごと人に見せられてしまうことがあるので、最初は対面か通話で伝え、文字で残すのはそのあとにするほうが安全です。
言葉は、返事を急がせない形にします。たとえば次のような言い方です。
「急に重い話でごめん。前から、友達としてだけじゃなく好きなんだと思う。返事がほしいわけじゃなくて、隠しているのがつらくなったから言わせてほしかった。友達でいられたら一番うれしい。それと、このことは誰にも言わないでいてくれると助かる」
この中に入っているのは、気持ちそのもの、返事を求めていないこと、友情を続けたい願い、秘密にしてほしいという頼み、の 4 つです。最後の 1 つは言いにくいかもしれませんが、相手が戸惑って誰かに相談したくなったとき、その頼みがあるかないかで行動が変わります。
相手の反応は、ほぼ次の 3 つに分かれます。戸惑って言葉が出ない場合は、その場で答えを引き出そうとせず、「考えてくれてありがとう、いつも通りで大丈夫だから」と言って、その日は早めに別れましょう。はっきり断られた場合は、理由を問い詰めず、友情を続けたいかどうかだけを相手に委ねます。気持ちを受け止めてもらえた場合も、関係の形をその場で決める必要はありません。
そしてもう一つ、自分の側にも守るべき秘密があります。もし相手がこれまでに、自分の性のあり方や恋愛について打ち明けてくれたことがあるなら、それを共通の友人に「あの子もそうかもしれない」と話してはいけません。片思いのつらさを誰かに聞いてほしいときこそ、相手のことは名前も特徴も伏せて、利害のない人か匿名の窓口に話すのが安全です。
どちらかが既婚のときは、気持ちと行動を分けて考える
好きになった友達が結婚している、あるいは自分が結婚している。この場合は、悩みの性質が一段変わります。気持ちが湧いたこと自体は、誰にも止められませんし、責められるものでもありません。けれども、その気持ちをもとにどう動くかは、自分で選べますし、選んだ行動の責任は自分が負うことになります。この節では、気持ちと行動をはっきり分けて考えます。
気をつけたいのは、「同性同士だから、浮気にはならない」という考え方です。相手が同性であっても、配偶者のいる人と二人だけの秘密を深めていけば、その配偶者にとっては信頼を裏切られる出来事になります。友達という立場は、境界をあいまいにしたまま近づける隠れみのにもなりやすいので、むしろ異性の場合より意識して線を引く必要があります。
相手が既婚の場合、気持ちを伝えることは、相手の家庭に揺さぶりをかけることでもあります。相手の結婚生活が苦しそうに見えても、それを自分が埋められるとは限りませんし、埋めるべき役目でもありません。気持ちは自分の中で大切に扱い、二人きりで深夜まで飲む、配偶者に言えない連絡を重ねる、といった行動からは距離を取ることを勧めます。会う頻度を落とし、共通の友人を交えた場で会う形に切り替えるだけでも、自分の気持ちの温度は少しずつ下がっていきます。
自分が既婚の場合は、問いがもう少し深くなります。同性の友達への気持ちをきっかけに、自分の性のあり方について、結婚する前には見ないようにしていたことに気づく人もいます。それは、配偶者を裏切ったという単純な話ではなく、自分自身についての大きな発見であることが多いものです。ただ、気づきが大きいほど、勢いで友達との関係を進めたり、配偶者に一度にすべてを打ち明けたりすると、誰にとっても取り返しのつかない形になりやすくなります。
この場合にまずするべきなのは、友達でも配偶者でもない第三者に、自分の気持ちを整理する場を持つことです。性のあり方の悩みに慣れたカウンセラーや、匿名で話せる相談窓口がその役目を担えます。配偶者とどう向き合うか、結婚を続けるかどうかは、その整理が済んでから考えても遅くありません。
一人で抱えきれなくなった夜の次の一歩
同性の友達への気持ちは、周りに相談しにくい悩みの代表です。友達に話せば当の相手に伝わるかもしれず、家族には自分の性のあり方から説明しなければならない。そうして誰にも言えないまま、気持ちだけが大きくなっていく人が少なくありません。誰にも言えない恥の重さは、それを抱えている時間の長さとともに増していきます。
話せる相手が身近にいないときは、匿名で使える窓口を頼ってください。よりそいホットラインには、性的指向や性自認の悩みを扱う専門の回線があり、通話は無料です。「同性を好きになったけれど、これでいいのか分からない」という段階でも相談できます。文字のほうが話しやすい人には、あなたのいばしょが 24 時間 365 日、無料で匿名のチャット相談を受け付けています。どちらもつながる窓口のページから探せます。対面で継続して話を聞いてもらいたい場合の探し方は、性の悩みの相談先を整理した記事にまとめています。
今夜できることを、ひとつだけ挙げておきます。この記事の表を見ながら、自分がこの友達に何を望んでいるのかを、メモに 3 行だけ書いてみてください。「一緒にいたい」「恋人ができたと聞くと苦しい」「でも友達でいられなくなるのはもっと怖い」。書き終えたら、伝えるか、しまっておくか、距離を置くかを、当面の方針として 1 つ選びます。
選んだ方針は、いつ変えてもかまいません。気持ちの名前も、急いで決める必要はありません。同性の友達を好きになったことは、間違いでも裏切りでもなく、あなたがその人を深く大切に思ってきたことの、ひとつの表れです。その気持ちを否定せずに、関係とあなた自身の両方を守るやり方を、少しずつ選んでいってください。
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