健康

顎の痛み・口が開かない - 顎関節症の原因とセルフケア

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顎関節症は現代人に急増している

顎関節症は、顎の関節や周囲の筋肉に痛みや機能障害が生じる疾患の総称です。口を開けると顎がカクカク鳴る、大きく口を開けられない、顎の周りが痛い、といった症状が特徴です。日本顎関節学会の調査では、何らかの顎関節症状を持つ人は成人の約 20 〜 30% に上ります。

特に 20 〜 30 代の女性に多く見られ、ストレス社会の進行とともに患者数は増加傾向にあります。顎関節症は自然に軽快するケースも多いですが、放置すると慢性化して日常生活に支障をきたすことがあります。

顎関節症の 4 つのタイプ

顎関節症は原因と症状によって 4 つのタイプに分類されます。第 1 型は咀嚼筋障害で、顎を動かす筋肉 (咬筋、側頭筋) の過緊張や痛みが主症状です。最も一般的なタイプで、ストレスによる食いしばりが主な原因です。

第 2 型は関節包・靭帯障害で、顎関節の関節包や靭帯に炎症が生じた状態です。口を開けたときに関節部分に鋭い痛みを感じます。第 3 型は関節円板障害で、顎関節内のクッション (関節円板) がずれた状態です。口を開閉するときにカクカク・ポキポキという音 (クリック音) が鳴ります。

第 4 型は変形性関節症で、関節の骨が変形した状態です。長期間の負荷によって関節面が摩耗し、ジャリジャリという音 (クレピタス) が特徴です。複数のタイプが同時に存在することも珍しくありません。

顎関節症の原因

顎関節症は単一の原因ではなく、複数の要因が重なって発症します。最大の要因はストレスによる食いしばり (クレンチング) と歯ぎしり (ブラキシズム) です。日中の無意識な食いしばりは、咀嚼筋に持続的な負荷をかけ、筋肉の疲労と痛みを引き起こします。歯ぎしりの習慣は顎関節症だけでなく歯の摩耗や知覚過敏の原因にもなるため早期の対策が重要です

噛み合わせの不正 (不正咬合) も要因の一つですが、以前考えられていたほど大きな影響はないとする研究が増えています。むしろ、頬杖をつく癖、片側だけで噛む習慣、うつ伏せ寝、長時間のデスクワークによる姿勢の悪化など、日常の習慣が複合的に作用しています。

外傷 (顎への打撲、大きく口を開けすぎた) や、長時間の歯科治療で口を開け続けたことがきっかけになるケースもあります。女性に多い理由としては、女性ホルモン (エストロゲン) が関節の弛緩性に影響を与えること、また女性は男性よりも顎関節が小さく、構造的に負荷がかかりやすいことが挙げられます。

セルフケアで症状を改善する

顎関節症の約 80% はセルフケアと生活習慣の改善で軽快するとされています。まず意識すべきは「TCH (Tooth Contacting Habit) の是正」です。 TCH とは、食事以外の時間に上下の歯を接触させる癖のことで、顎関節症患者の多くに見られます。

正常な状態では、上下の歯は食事と嚥下の瞬間以外は接触していません。 1 日の歯の接触時間は合計 20 分程度が正常です。デスクワーク中やスマートフォン操作中に歯を食いしばっていないか、意識的にチェックしてください。「唇を閉じて、歯を離す」を合言葉にし、リマインダーとしてパソコンやスマートフォンに付箋を貼る方法が効果的です。

温湿布も有効です。蒸しタオルを顎の痛む部分に 15 〜 20 分当てると、筋肉の緊張が緩和されます。急性の炎症 (腫れや熱感がある場合) には冷湿布を使い、慢性的な筋肉の痛みには温湿布を使います。食事は硬いものを避け、小さく切った柔らかい食べ物を両側で均等に噛むようにします。ガムを噛む習慣がある場合は中止してください。

顎周りのセルフマッサージ

咬筋のマッサージは顎関節症の痛みを軽減する効果があります。咬筋は頬骨の下から下顎の角 (エラ) にかけて走る筋肉で、歯を食いしばると硬くなる部分です。指の腹で咬筋を軽く押さえ、小さな円を描くようにマッサージします。 1 回 2 〜 3 分、 1 日 2 〜 3 回行います。

側頭筋のマッサージも併せて行います。こめかみに指を当て、同様に円を描くようにほぐします。側頭筋は食いしばりで特に緊張しやすい筋肉です。肩こりとデスクワークの関係と同様に、顎の筋肉も長時間の緊張で凝り固まります。

開口訓練も症状の改善に役立ちます。口をゆっくり大きく開け、痛みを感じない範囲で最大限に開いた状態を 10 秒間キープします。これを 5 回繰り返します。無理に大きく開けると症状が悪化するため、痛みが出ない範囲で行うことが重要です。

歯科での治療法

セルフケアで改善しない場合は、歯科 (口腔外科) を受診します。最も一般的な治療はスプリント療法で、就寝時にマウスピース (スプリント) を装着して顎関節への負荷を軽減します。スプリントは上下の歯の接触パターンを均一にし、特定の歯や関節に集中する力を分散させます。

薬物療法として、非ステロイド性抗炎症薬 (NSAIDs) が痛みと炎症の軽減に使用されます。筋弛緩薬が処方されることもあります。重症例では関節腔洗浄 (関節内に生理食塩水を注入して洗浄する) や、関節鏡手術が行われることがありますが、手術が必要なケースは全体の 5% 未満です。

理学療法 (超音波治療、低周波治療) も筋肉の緊張緩和と血行促進に効果があります。認知行動療法ストレス管理と TCH の是正を行うアプローチも、長期的な改善に有効です。顎関節症に関する書籍で基礎知識を得ておくと、治療方針の理解が深まります。

顎関節症は多くの場合、数ヶ月から 1 年程度で症状が改善します。焦って複数の治療を同時に始めるよりも、まずセルフケアを 2 〜 4 週間続け、改善が見られない場合に歯科を受診するという段階的なアプローチが推奨されます。日常の小さな習慣の改善が、顎関節症の予防と改善に大きな効果をもたらします。

この記事のポイント

  • 顎関節症の約 80% はセルフケアで改善する
  • TCH (歯の接触癖) の是正が最も重要な対策
  • 咬筋と側頭筋のセルフマッサージで痛みを軽減できる
  • 温湿布は慢性的な筋肉痛に、冷湿布は急性の炎症に使う

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