健康

鉄欠乏は女性の隠れた流行病 - 貧血でなくても鉄が足りない「隠れ鉄欠乏」の実態

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貧血でなくても鉄は足りていない

健康診断で「貧血なし」と言われたから鉄は足りている。そう思い込んでいる女性は多い。しかし、一般的な健康診断で測定されるのはヘモグロビン値であり、これは鉄欠乏の最終段階でようやく低下する指標だ。ヘモグロビンが正常範囲内でも、体内の貯蔵鉄が枯渇している「隠れ鉄欠乏 (潜在性鉄欠乏)」の状態にある女性は、日本では推定 40〜50% にのぼるとされる。

鉄欠乏は 3 段階で進行する。第 1 段階は貯蔵鉄の減少 (フェリチン低下)、第 2 段階は血清鉄の低下と鉄結合能の上昇、第 3 段階でようやくヘモグロビンが低下して「貧血」と診断される。つまり、健康診断で「貧血なし」と判定されても、第 1〜2 段階の鉄欠乏が見逃されている可能性がある。

フェリチンと貯蔵鉄の関係

フェリチンとは何か

フェリチンは体内の鉄を貯蔵するタンパク質で、主に肝臓、脾臓、骨髄に存在する。血液中のフェリチン値は、体内の貯蔵鉄量を反映する最も信頼性の高い指標だ。一般的な基準値は 12〜150ng/mL とされるが、この下限値 12ng/mL は「貧血を起こさない最低限」であり、最適な健康状態を維持するには不十分だ。

理想的なフェリチン値

鉄欠乏の症状が改善するフェリチン値は、多くの研究で 40〜50ng/mL 以上とされている。つまり、フェリチンが 15ng/mL で「基準値内」と判定されても、実際には鉄不足の症状が出ている可能性がある。疲労感、集中力低下、抜け毛、冷え性などの症状があり、フェリチンが 30ng/mL 未満であれば、鉄欠乏を疑って対策を始める価値がある。

隠れ鉄欠乏の多彩な症状

慢性的な疲労感

鉄はミトコンドリアでのエネルギー産生に不可欠な元素だ。鉄が不足すると、細胞レベルでのエネルギー産生効率が低下し、「十分に寝ているのに疲れが取れない」という慢性疲労が生じる。この疲労感は休息では改善せず、カフェインで一時的にごまかしても根本解決にならない。

集中力の低下と脳の霧

鉄は脳内の神経伝達物質 (ドーパミンセロトニン) の合成にも関与している。鉄不足は集中力の低下、記憶力の減退、頭がぼんやりする「ブレインフォグ」を引き起こす。仕事のパフォーマンスが落ちたと感じたとき、原因がスキル不足ではなく鉄不足だったというケースは珍しくない。

抜け毛と爪の脆弱化

鉄は毛母細胞の分裂に必要な酸素供給に関与する。フェリチンが 30ng/mL を下回ると、休止期脱毛 (テロジェンエフルビウム) のリスクが上昇する。爪がスプーン状に反る (匙状爪) のは鉄欠乏の古典的な徴候だが、そこまで進行する前に、爪が割れやすい、縦線が目立つといった軽微な変化が現れる。

冷え性の悪化

鉄はヘモグロビンの構成要素であり、酸素を全身に運搬する役割を担う。鉄が不足すると末梢への酸素供給が低下し、手足の冷えが悪化する。冷え性を「体質」と諦めている女性の中に、鉄補充で劇的に改善する人がいる。

月経による鉄損失の現実

月経のある女性は、毎月の出血で鉄を失い続けている。1 回の月経で失われる鉄の量は平均 15〜30mg だが、経血量が多い人 (過多月経) では 50mg 以上に達することもある。食事から吸収される鉄は 1 日約 1mg 程度であり、月経による損失を食事だけで補うのは容易ではない。

特にリスクが高いのは、月経量が多い人、ダイエットで食事量を制限している人、菜食主義の人、激しい運動をしている人 (足底の衝撃で赤血球が破壊される溶血性貧血のリスク) だ。これらの条件が重なると、鉄欠乏は急速に進行する。

ヘム鉄と非ヘム鉄の違い

吸収率の差

食品中の鉄には 2 種類ある。動物性食品に含まれるヘム鉄と、植物性食品に含まれる非ヘム鉄だ。ヘム鉄の吸収率は 15〜35% と高く、非ヘム鉄の吸収率は 2〜20% と低い。レバー 100g には約 13mg の鉄が含まれ、そのうち 2〜4.5mg が実際に吸収される。一方、ほうれん草 100g の鉄は約 2mg で、吸収されるのは 0.04〜0.4mg にすぎない。

吸収を高める食べ合わせ

非ヘム鉄の吸収率はビタミン C と一緒に摂ることで 2〜3 倍に向上する。ほうれん草のおひたしにレモンを絞る、小松菜の炒め物にパプリカを加えるなどの工夫が有効だ。逆に、コーヒーや紅茶に含まれるタンニン、乳製品のカルシウムは鉄の吸収を阻害するため、鉄を意識した食事の前後 30 分は避けた方がよい。 (鉄分と栄養の関連書籍で食事の組み合わせを学べます)

鉄剤の正しい飲み方

医師の診断を受けてから

鉄の過剰摂取は肝臓に蓄積して臓器障害を引き起こすリスクがある。自己判断で高用量の鉄サプリを長期間摂取するのは危険だ。まずは血液検査でフェリチン値を測定し、医師の判断のもとで鉄剤の種類と用量を決定する。

副作用への対処

鉄剤の最も多い副作用は胃腸障害 (吐き気、便秘、腹痛) だ。空腹時の方が吸収率は高いが、胃腸症状が強い場合は食後に服用する。また、1 日の用量を 2〜3 回に分けて服用すると、1 回あたりの鉄の量が減り、副作用が軽減される。キレート鉄やヘム鉄サプリは非ヘム鉄の鉄剤より胃腸への負担が少ないとされる。

鉄欠乏を予防する食生活

鉄を多く含む食品を日常的に取り入れることが予防の基本だ。レバー (豚レバー 100g で鉄 13mg)、赤身肉 (牛もも肉 100g で鉄 2.7mg)、あさり (100g で鉄 3.8mg)、小松菜 (100g で鉄 2.8mg)、納豆 (1 パックで鉄 1.5mg) を意識的に食卓に並べる。週に 1〜2 回レバーを食べる習慣をつけるだけで、鉄の摂取量は大幅に改善する。 (女性の健康に関する書籍も参考になります)

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