ナラティブセラピー
人が自分の人生について語る物語 (ナラティブ) に着目し、問題に支配された物語を書き換えることで回復を促す心理療法のアプローチ。
ナラティブセラピーとは
ナラティブセラピー (Narrative Therapy) とは、人が自分自身や自分の人生について語る「物語」に焦点を当てる心理療法だ。1980 年代にマイケル・ホワイトとデイヴィッド・エプストンによって体系化された。このアプローチの根底にあるのは、「人は問題ではない。問題が問題なのだ」という哲学だ。たとえば「私はダメな人間だ」という物語を生きている人に対して、その人自身を変えようとするのではなく、その物語がどのように構成され、維持されているかを一緒に検討し、別の物語の可能性を探っていく。
外在化という技法
ナラティブセラピーの中核的な技法が「外在化」だ。これは、問題をその人のアイデンティティから切り離し、外側に置く作業を指す。「私は不安な人間だ」を「不安が私に影響を及ぼしている」と言い換えるだけで、人と問題の関係が変わる。問題が自分の本質ではなく、自分に影響を与えている外部の存在として捉え直されると、それに対して距離を取り、交渉し、抵抗する余地が生まれる。セラピストは「その不安はいつからあなたの生活に入り込んできましたか」「不安の影響が弱まった瞬間はありましたか」といった問いを通じて、問題と人の関係を丁寧に解きほぐしていく。
オルタナティブストーリーの構築
外在化によって問題との距離が生まれると、次のステップとして「ユニークな結果」を探す作業に入る。これは、問題に支配された物語の中にありながらも、問題の影響を受けなかった瞬間や、問題に抵抗できた経験を見つけ出すことだ。「不安に押しつぶされそうだったけれど、あのとき一歩踏み出せた」という小さな例外が、新しい物語 - オルタナティブストーリー - の種になる。その種を丁寧に育て、過去の経験の中から同様のエピソードを集め、自分の強さや価値観に根ざした別の物語を編み直していく。ナラティブセラピーは、人生の事実を変えるのではなく、事実の意味づけを変えることで、生きる力を取り戻す営みだ。
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