健康

多嚢胞性卵巣症候群 (PCOS) との付き合い方 - 生活習慣で改善できること

この記事は約 3 分で読めます

PCOS とは - 女性の 5〜10% が抱える内分泌疾患

世界保健機関 (WHO) によると、多嚢胞性卵巣症候群 (PCOS: Polycystic Ovary Syndrome) は生殖年齢の女性の推定 10〜13% にみられ、女性に多いホルモンの病気の一つです。卵巣に多数の小さな卵胞 (嚢胞) が存在し、排卵が不規則になるか起こらなくなります。診断基準 (ロッテルダム基準) は、排卵障害 (月経不順・無月経)、高アンドロゲン血症 (ニキビ・多毛・脱毛) またはその臨床所見、超音波検査での多嚢胞性卵巣所見の 3 つのうち 2 つ以上を満たすことです。PCOS は単なる婦人科疾患ではなく、代謝異常 (インスリン抵抗性、脂質異常症)、心血管リスク、精神的健康にも関わる、全身に影響しうる疾患です。

PCOS の根本にあるインスリン抵抗性

PCOS の病態には、インスリン抵抗性が関わっているとされます。PCOS ではインスリン抵抗性を伴う場合があります。インスリン抵抗性とは、細胞がインスリンに対する感受性が下がり、血糖値を下げるためにより多くのインスリンが必要になる状態です。過剰なインスリンは卵巣を刺激してアンドロゲン (男性ホルモン) の産生を増やすと考えられています。アンドロゲンの過剰は卵胞の正常な発育を妨げ、排卵障害につながります。さらに、インスリン抵抗性は肝臓での性ホルモン結合グロブリン (SHBG) の産生を低下させ、血中の遊離アンドロゲン濃度を上昇させるという悪循環になるとされます。

食事の改善 - インスリン抵抗性を軽減する食べ方

PCOS の管理では、食事の見直しが治療の土台の一つと考えられています。基本方針は血糖値の急上昇を防ぎ、インスリン分泌を穏やかに保つことです。低 GI (グリセミック・インデックス) 食品を中心に選びます。白米を玄米や雑穀米に、食パンを全粒粉パンに、うどんをそばに置き換えるのも一つの方法です。食物繊維を毎食取り入れ、野菜やきのこ類を先に食べてから主食を食べる「ベジファースト」を実践します。タンパク質は毎食 20〜30g を目安に摂取し、血糖値の安定と満腹感の維持に役立てます。加工食品、砂糖入り飲料、精製炭水化物の過剰摂取は避けます。抗炎症作用のある食品 (青魚、ナッツ、オリーブオイル、ベリー類) を取り入れる方法もあります。ホルモンバランスと生活習慣の関連については、ホルモンバランスの整え方を解説した記事も参考になります。

運動の効果 - インスリン感受性を高める

定期的な運動はインスリン感受性を高め、PCOS の症状の軽減に役立つとされます。週 150 分以上の中強度の有酸素運動 (早歩き、水泳、サイクリング) が推奨されています。運動は体重が減らなくてもインスリン感受性を高めると考えられており、「痩せなければ意味がない」わけではありません。筋力トレーニングで筋肉量が増えると基礎代謝が高まり、インスリン感受性の改善につながることがあります。週 2〜3 回の筋トレを有酸素運動と組み合わせるのも一つの方法です。運動の種類にこだわるより、楽しめる運動を選ぶと続けやすくなります。

体重管理 - 5% の減量で症状が改善する

PCOS には過体重や肥満の人もいれば、体重が正常範囲の「痩せ型 PCOS」もあります。過体重の場合、体重の 5〜10% の減量が、月経周期の正常化、排卵の回復、アンドロゲン値の低下、インスリン感受性の改善につながるとされます。70kg の女性であれば 3.5〜7kg の減量です。急激なダイエットはリバウンドやホルモンバランスの乱れにつながりやすく、月に 0.5〜1kg のペースでの緩やかな減量が目安になります。痩せ型 PCOS の場合は減量ではなく、食事の質の改善と運動習慣の確立に焦点を当てます。

PCOS に伴うニキビと多毛への対処

アンドロゲン過剰による皮膚症状は、PCOS 患者の生活の質に影響することがあります。ニキビは顎、フェイスライン、背中に好発し、通常のスキンケアでは改善しにくいとされます。皮膚科での治療 (外用レチノイド、過酸化ベンゾイル、抗菌薬) に加え、低用量ピルによるアンドロゲン抑制が効果的です。多毛 (顔、胸、腹部、背中の濃い毛) に対しては、医療レーザー脱毛が長期的な解決策となります。スピロノラクトン (抗アンドロゲン薬) の内服も多毛の改善に有効ですが、妊娠中は禁忌です。大人ニキビの根本原因については、大人ニキビの原因と対策を解説した記事も参考になります。

妊娠を目指す場合の治療選択肢

PCOS は不妊の原因として最も多い排卵障害です。しかし、適切な治療により多くの PCOS 患者が妊娠に成功しています。第一選択はクロミフェン (クロミッド) による排卵誘発で、約 80% の患者で排卵が回復し、そのうち約 50% が 6 周期以内に妊娠します。クロミフェンが無効な場合は、レトロゾール (フェマーラ) が代替薬として使用されます。近年の研究では、レトロゾールの方がクロミフェンより排卵率・妊娠率が高いとする報告もあります。ゴナドトロピン注射による排卵誘発や、腹腔鏡下卵巣多孔術 (LOD) も選択肢です。体外受精 (IVF) は他の治療が無効な場合の最終手段として位置づけられています。妊活に関する不安については、妊活と将来設計について考える記事も参考になります。

PCOS との長期的な付き合い方

PCOS は完治する疾患ではなく、生涯にわたって管理が必要な慢性疾患です。しかし、生活習慣の見直しで症状を和らげられることは、この疾患と向き合う支えになります。定期的な婦人科受診 (年 1〜2 回) で月経周期、ホルモン値、超音波所見をモニタリングします。PCOS は 2 型糖尿病、脂質異常症、心血管疾患のリスクを高めるため、血糖値や脂質プロファイルの定期的なチェックも重要です。子宮内膜がんのリスクも上昇するため、3 ヶ月以上月経がない場合はプロゲステロン製剤で子宮内膜を定期的にリセットする必要があります。

この悩みに合う相談窓口

受付の表示は日本時間で、祝日は考慮していません。ほかの窓口はいまつながる相談窓口で見られます。

この記事を共有

関連記事