健康

卵巣嚢腫が見つかったら - 卵巣嚢腫の種類と経過観察か手術かの判断基準

この記事は約 3 分で読めます

卵巣嚢腫とは - 卵巣にできる袋状の腫瘤

卵巣嚢腫は、卵巣の中や表面にできる液体や半固形物で満たされた袋状の腫瘤です。婦人科の超音波検査で偶然発見されることが多く、「卵巣が腫れている」と告げられて不安になる方は少なくありません。しかし、卵巣嚢腫の大半は良性であり、自然に消失するものも多くあります。閉経前の女性では非常に一般的で、排卵のたびに小さな嚢胞が形成されては消えるのが正常な卵巣の営みです。実際、月経周期のある女性の卵巣を超音波で観察すると、排卵前に 2〜3cm の卵胞嚢胞が見られるのはごく普通のことです。重要なのは、嚢腫の種類と大きさを正確に把握し、経過観察で十分なのか、治療が必要なのかを適切に判断することです。卵巣嚢腫は超音波検査の普及により発見される機会が増えており、「見つかった」こと自体は早期対応のチャンスと捉えるべきです。

卵巣嚢腫の種類

機能性嚢胞 (卵胞嚢胞・黄体嚢胞)

最も一般的なタイプで、月経周期に伴って自然に発生・消失します。卵胞嚢胞は排卵されなかった卵胞が液体で膨張したもので、通常 2〜3 ヶ月以内に自然消失します。黄体嚢胞は排卵後の黄体に液体や血液が溜まったもので、こちらも数週間で自然に縮小します。いずれも治療は不要で、経過観察のみで対応します。

皮様嚢腫 (成熟嚢胞性奇形腫)

胚細胞由来の腫瘍で、嚢腫の中に毛髪、皮脂、歯、骨などの組織が含まれます。20〜30 代の女性に多く、両側の卵巣に発生することもあります。自然消失しないため、5cm 以上の場合は手術が検討されます。良性ですが、まれに (1% 未満) 悪性転化することがあります。10cm を超える大きな皮様嚢腫は茎捻転のリスクが高まるため、サイズに関わらず定期的な経過観察が重要です。

チョコレート嚢胞 (子宮内膜症性嚢胞)

子宮内膜症が卵巣に発生し、月経のたびに嚢胞内に古い血液が蓄積して暗褐色のチョコレート状になったものです。強い月経痛や性交痛を伴うことが多く、不妊の原因にもなります。4cm 以上のチョコレート嚢胞は破裂のリスクもあるため、サイズと症状に応じた治療方針の検討が必要です。子宮内膜症の詳細については、子宮内膜症の基礎知識を解説した記事も参考になります。

経過観察で済むケース

以下の条件を満たす場合は、定期的な超音波検査による経過観察が基本方針です。嚢腫の大きさが 5cm 未満で、超音波検査で内部が均一な液体で満たされている (単純性嚢胞)、血液検査の腫瘍マーカー (CA125) が正常範囲内、症状がないか軽微、閉経前の女性で機能性嚢胞が疑われる場合です。経過観察の間隔は通常 3〜6 ヶ月ごとの超音波検査で、嚢腫の大きさの変化を追跡します。経過観察中に嚢腫が縮小・消失すれば機能性嚢胞と確定でき、それ以上の検査や治療は不要です。多くの機能性嚢胞は 2〜3 回の月経周期で自然消失します。

手術が検討されるケース

以下の場合は手術が検討されます。嚢腫の大きさが 5cm 以上で増大傾向にある場合、超音波検査で充実性成分 (固形部分) や隔壁が認められる場合、腫瘍マーカー (CA125) が上昇している場合、閉経後に新たに発見された嚢腫 (機能性嚢胞の可能性が低いため)、茎捻転 (卵巣嚢腫がねじれる) や破裂による急性腹痛がある場合、不妊治療の妨げになっている場合です。茎捻転は突然の激しい下腹部痛、吐き気、嘔吐を伴う緊急事態で、卵巣への血流が遮断されるため、緊急手術が必要です。

手術の方法 - 腹腔鏡手術と開腹手術

現在の標準的な術式は腹腔鏡手術です。腹部に 3〜4 箇所の小さな穴 (5〜12mm) を開け、カメラと器具を挿入して嚢腫を摘出します。開腹手術と比較して、傷が小さい、術後の痛みが少ない、入院期間が短い (2〜4 日)、社会復帰が早い (1〜2 週間) という利点があります。嚢腫のみを摘出して卵巣を温存する「嚢腫摘出術」と、卵巣ごと摘出する「卵巣摘出術」があり、年齢、妊娠希望の有無、悪性の可能性によって術式が選択されます。妊娠を希望する場合は、可能な限り卵巣を温存する方針が取られます。術後の回復は個人差がありますが、腹腔鏡手術であれば退院後 1〜2 週間で日常生活に復帰でき、術後 1〜3 ヶ月で運動や性交渉も再開可能です。手術費用は保険適用で自己負担 3〜8 万円程度が目安ですが、高額療養費制度を利用すればさらに負担を軽減できます。月経痛の対処法については、鎮痛剤に頼らない月経痛の緩和法を解説した記事も参考になります。卵巣嚢腫の関連書籍は Amazon でも探せます。

卵巣嚢腫と妊娠への影響

機能性嚢胞は通常、妊娠に影響しません。皮様嚢腫も卵巣機能を直接障害しないため、嚢腫が小さければ妊娠は可能です。ただし、大きな嚢腫は排卵を妨げたり、妊娠中に茎捻転を起こすリスクがあるため、妊娠前の手術が推奨されることがあります。チョコレート嚢胞は子宮内膜症に伴うため、卵巣機能の低下や卵管の癒着により不妊の原因となることがあります。手術で嚢腫を摘出すると卵巣予備能 (残りの卵子の数) が低下する可能性があるため、妊娠希望のある方は生殖医療の専門医と相談の上、手術のタイミングを慎重に決定する必要があります。妊活に関する不安については、妊活と将来設計について考える記事も参考になります。婦人科の関連書籍は Amazon でも見つかります。

定期検診の重要性

卵巣嚢腫は自覚症状がないまま大きくなることがあり、茎捻転や破裂といった緊急事態で初めて発見されるケースも少なくありません。年 1 回の婦人科検診 (超音波検査を含む) を受けることで、嚢腫の早期発見と適切な経過観察が可能になります。特に、下腹部の膨満感、鈍痛、月経不順、性交時の痛みなどの症状がある場合は、早めに婦人科を受診してください。卵巣がんのスクリーニングとしても、定期的な超音波検査は有用です。卵巣がんは初期症状に乏しく「沈黙の臓器」と呼ばれますが、検診で卵巣の状態を定期的に確認することで、異常の早期発見につながります。

この記事を共有

X で共有 はてなブックマークに追加

関連記事